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ピンク・クラウド (2020):映画短評

ピンク・クラウド (2020)

2023年1月27日公開 103分

ピンク・クラウド
(C) 2020 Prana Filmes

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3

なかざわひでゆき

自由はなくとも生きているだけマシなのか、それとも…?

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ある日突然、世界中が有毒なピンク色の雲に包まれ、人々が家から一歩も外へ出れなくなってしまう…という、まるでコロナ禍の混乱を投影したような映画だが、実際は’19年に完成していたという。それだけに、劇中のコロナ禍の世界を予見したような描写の数々は興味深い。そうした中、元の生活に戻りたいと渇望するヒロインは、ステイホームに難なく順応してしまったパートナー、新しい生活様式の中で生まれ育った息子から理解されず、徐々に精神のバランスが狂っていく。たとえ自由がなくとも生きているだけマシなのか、それとも自由がないなら死んだ方がマシなのか。見る人の価値観によって印象が大きく分かれる作品であろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

もしも、ステイホームがただならぬ長期戦になったら?

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

『サイレント・ナイト』の猛毒ガスに続き、“新たな脅威”が世界を襲うなか、さまざまな人間模様が描かれていく話だけに、イギリスとブラジル、お国柄の違いが見えてくる。なかでも、ワンナイトのつもりだった主人公カップルの綺麗ごとじゃ済まないエピソードの数々は、やはり興味深い。彼らの食料以外のライフラインや収入源の問題など、ツッコミ始めたらキリがないが、否応なしでも緊急事態宣言中のステイホームの記憶が甦るうえ、政府から届く支援物資に関しては、自宅療養中の陽性者に届くダンボールそのもの。「もしも、あれがただならぬ長期戦になったら?」と考えただけでも、ゾッとするディストピアSFとしての見応えアリ。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

異常事態が、無意識だった事をあからさまにする

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 10秒で人間を死に至らせるピンク色の雲が出現し、人々が建物の外に出られなくなった世界。食糧は政府により配達されるので家に閉じこもっていれば生き延びられるが、その状況下で生きていくとはどういうことなのか。映画冒頭で、本作が新型コロナ以前に製作されたことが表記される通り、これはコロナ生活の暗喩ではなく、誰もが行っている普段の生活の暗喩だろう。

 世界に「制約」が目に見える形で出現し、人々がそれに適応しようとする過程で、これまで意識していなかったさまざまなことがあからさまになる。自分についても、社会についても。そのきっかけとなるものは、一見、柔らかで無害そうに見える。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

空気からの謎の感染→自宅お籠り社会を、コロナ前に予言してた?

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

あの日本のバンドとは無関係。文字どおり「ピンクの雲」が出現し、そのモヤモヤな空気に触れるとほぼ即死というディストピアSFだが、人々の防御法がまさにコロナ禍での自宅待機生活そのまま。食料の配達、離れて暮らす家族とのリモート関係、さらに自宅生活での絶望まで、ついちょっと前にみんなで経験したことが重なるのだけど、これがコロナの前に作られたと聞くにつけ予言的で怖くなる…。
ただし映画全体のトーンはどこか雲のようにフンワリした印象。驚くほど長くなる隔離生活で、主人公の家族ドラマ、その喜怒哀楽に日常レベルで共感してしまう。色もピンクが基調なので、終始、夢の国に入り込んだような酩酊感。えも言われぬ心地よさ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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