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別れる決心 (2022):映画短評

別れる決心 (2022)

2023年2月17日公開 138分

別れる決心
(C) 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.7

相馬 学

あなたの未解決事件になりたい

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ここ10年のパク・チャヌク作品を振り返ると、持ち味である暴力性の質が以前と変わってきたのは明白。バイオレンスはエロスへとシフトし、静かではあるが強烈な印象を残す。本作は、その静けさの到達点だ。

 不審な事故死をめぐるミステリーはユーモアを宿しながらラブストーリーへと変質。しかし、この愛の危険性を匂わせることも忘れない。恋の駆け引きに、刑事と容疑者の駆け引きが絡み合う妙。

 “愛は永遠の謎”とはよく言ったもので、事件の謎が解けてもそれは残る。高山から海へと事件の舞台を変えつつ、男女の心の軌跡を川の流れのようにたどった物語の切なさと言ったら。この“静けさ”は強烈ではあるが、美しい。

この短評にはネタバレを含んでいます
轟 夕起夫

「謎恋愛」を巡る永久の「未解決事件」であり「完全犯罪」の成就

轟 夕起夫 評価: ★★★★★ ★★★★★

なぜか我々は普段、「恋」と「愛」を組み合わせた「恋愛」という言葉を無条件で受け入れ使っているが、監督パク・チャヌクのこの新作を観てしまうとちょい足しし、「謎恋愛」なんて造語をひねり出したくなる。

人は他者の言葉、行動に対して理解と誤解を繰り返す。だから劇中では“推量”と“翻訳”が大きくフィーチャーされる。人の心、それも本心を推し量り、完全に翻訳することの難しさ。

そこに触れてゆく本作は、刑事と容疑者という特殊な関係性から始まるが、二人に待っているものとはミステリーラブを巡る、永久の「未解決事件」であり、そして我ら観客をも巻き込んだ極めて映画的(フィクショナル)な「完全犯罪」の成就だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

星10個級! パク・チャヌク監督最高傑作!

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

極上の甘美な映画体験。ボディはヒッチコック『めまい』(+『裏窓』他諸々)、ムードはアントニオーニ。増村『妻は告白する』やヴィスコンティ『ベニスに死す』への明確な補助線すら、一筋縄ではいかぬ霧の中の白日夢に隠れて眩惑させられる。底なし沼にハマるような破格の面白さだ。

身も蓋もなく言えば「不倫メロドラマ」だが、タン・ウェイのビー・ガン監督『ロングデイズ・ジャーニー』とも重なり超える戦闘性がファム・ファタールの定義を更新。パク・チャヌク監督のフィルモグラフィでは『渇き』からの連続性が強い。音声翻訳アプリなど、デジタル・デバイス・サスペンスとも呼べる「21世紀の映画」としての話法の革新にも痺れた!

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

スマホで翻訳された"言葉"に揺れる気持ちが潜む

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 基本は宿命の女に翻弄される男のファム・ファタールものなのだが、奇妙なユーモア感覚が漂い、このジャンルの典型に収まるところから微妙にずれていく。

 際立つのは"言葉"の使い方。英語タイトルと同じ「別れる決心」からして、"決心すること"は"実際に別れること"と同じではない。さらにヒロインが中国出身で韓国語が不得手な設定で、韓国人の主人公との言葉のやり取りは、スマホの翻訳機能を介して行われる。翻訳によって変形していく意味。しかし2人は、そんな差異を軽々と飛び越えて、言葉の表面的な意味とは別の、その言葉を発した相手の真意を見抜こうとする。翻訳機の無機質な声の底に、揺れ動く気持ちが潜んでいる。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

パク・チャヌクの凄みを再確認

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

ちょっと久々なパク・チャヌク監督の最新作は、健在ぶりというか、さらなる進化&深化すら感じさせるサスペンスロマンス映画の大傑作でした。
パク・チャヌクのサスペンスとロマンスのバランス感覚については過去作からずっと唸らせるものがありましたが、本作はさらに一段上に行った感じがあります。
細部までこだわり抜かれたビジュアルセンスも見事の一言です。エンディングの凄まじさについては”見てください”以外の言葉が見つかりません。映画に圧倒されるという感覚の心地よさを再確認させてくれた逸品でした。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

映画表現の地平を超えていき、★5でも足らぬ魔物的傑作

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

簡単に評するのは困難。ただ言えるのは、観た後しばらく恍惚状態に陥るということ。
落下事故を巡る、捜査する警部と死亡男性の妻の関係、その悩ましさ、もの苦しさ、相手への挑発や愛と欲望を、あらゆる大胆な“映画的”演出を繰り出して表現。妄想の生々しいビジュアル化。現実との鮮やかなシンクロ。微妙な時間と空間のズレ。それらが巧みに構成され、崩壊しながらも本能に抗えぬ人間の心理を究めていく…。

監督らしい衝撃描写も超えるかのように、『ラスト、コーション』から見事に魔性の女へ変貌したタン・ウェイ、『殺人の追憶』から多層な心理を表現できる名優に成長したパク・ヘイルと、俳優とはこのように進化するのだと深く感銘。

この短評にはネタバレを含んでいます
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