ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう (2021):映画短評
ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう (2021)ライター2人の平均評価: 4.5
映画とサッカーと、恋愛とクタイシの街
W受賞した第22回東京フィルメックスでは『見上げた空に何が見える?』の邦題で上映されたジョージア産の逸品。16mmで柔らかに撮られたクタイシの街。そこに恋の魔術的リアリズムを乗っける様な語り口。ジョージア文字のテロップや奇妙なナレーション、謎の2部構成で150分。実験性溢れるシネマティックな愉楽は不思議な人懐っこさに満ちている。
監督は1984年生のアレクサンドレ・コベリゼ(天才か、天然か?)。本作はアカデミーの卒業制作だが、地元の先輩イオセリアーニの進化形とも呼びたくなるノリ。「繋ぎ間違い」のような遊戯性はヌーヴェル・ヴァーグ的で、特にジャック・リヴェットの変人ぶりを愛するご同輩にお薦め。
ジョージア発のちょっとシュールで寓話めいたラブストーリー
たまたますれ違った見ず知らずの男女が恋に落ち、連絡先も交換しないままデートの約束をしたところ、呪いによって2人とも外見が変えられてしまい、再び出会いたくても出会えなくなってしまう。ちょっとシュールなタッチの寓話めいたラブストーリーなのだが、しかしメインプロットはそれほど重要でもなく、むしろ監督の視線は舞台となるジョージアの古都クタイシの美しい景色と、そこで住む人々の素朴な暮らしの営みに注がれ、この狭いようでいて広い世界で運命の相手にめぐり逢うことのささやかな奇跡を謳いあげる。遊び心溢れるユーモラスな演出もなかなか心憎い。2時間半と長尺だが、穏やかで心地良い気分に浸れる。