無情の世界 (2023):映画短評
無情の世界 (2023)ライター2人の平均評価: 3.5
三者三様の作家性が堪能できる短編集
ファムファタールに唐田えりかを迎えた“もうひとつの『夜を走る』”といえる佐向大監督作に、得意のガンアクションだけでなく、強面俳優・渡部龍平のメタ仁侠映画に仕上げた山岸謙太郎監督作。そして、2つのスクール(護身術と恋愛講座)が絶妙に絡み合う脚本の面白さから一転、『POP!』以上にシュールでブッ飛んだ展開が待ち受ける小村昌士監督作。三者三様の作家性が堪能できる短編だけに、それぞれの監督のファンなら納得の仕上がりだ。そして、どこか抽象的なタイトルなど、いろんな意味で裏切ってくれるなか、8月公開の『17歳は止まらない』ではメガネっ子を演じている白石優愛の女優との可能性も目の当たりにする。
これほど粒ぞろいで面白いオムニバスは希少!
驚くほど上出来。個性バラバラの異能監督3人が集まり、各々の味がしっかり楽しめる。佐向大の『真夜中のキッス』は、アルドリッチ『キッスで殺せ!』など50sフィルムノワールから自作のパロディ的展開へと繋ぎ軽やかに疾走する。山岸謙太郎の『イミテーション・ヤクザ』は俳優・渡部龍平の「ほぼ本人」役。虚実の皮膜の可笑しみや空間設計の巧さなど、どこかチャーリー・カウフマン調。
小村昌士の『あなたと私の二人だけの世界』は『POP!』の鬼才らしい奇想と風刺で悶絶させる衝撃作。いずれも誤解やズレが機動力となった劇で、R・ストーンズが由来とおぼしきタイトルとも絶妙に響き合う。今回が初プロデュースの小林且弥にも拍手!