フリークスアウト (2021):映画短評
フリークスアウト (2021)ライター3人の平均評価: 3.7
差別する側に回ってしまう被差別者の歪んだ心理が哀しい
ナチス占領下のイタリアで、特殊能力を持つサーカス団のフリークスたちが、マイノリティを迫害するナチスに戦いを挑む。さながら『フリークス』×『ファンタスティック・フォー』。皮肉なのは、ナチスの手先となる男フランツもまたフリークスということだろう。見世物として周囲から嘲笑われることで存在を許され、エリートの家族からも蔑まれてきたマイノリティが、自分だってマジョリティの一員になりたい!家族から認められたい!失われた尊厳を取り戻したい!との願いから、自ら差別する側に回ってマイノリティの迫害に加担してしまう。その歪んだ心理が恐ろしくもあり哀しくもある。もちろん、スーパーヒーロー映画としても抜群に面白い。
あなたも異形、私も異形
トッド・ブラウニングの『フリークス』に敬意を表しつつエンタテインメントに昇華する、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』のG・マイナッティ監督のイイ仕事。
サーカス団員たちのめくるめく芸から虐殺へと展開するオープニングからして吸引力はすさまじい。そこに絡む“異形の者”たちの物語。悪の側のナチスもそうだし、そのナチスに認められない悪役の異形っぶりも面白く、“まとも”の概念が狂ってくる、
監督は女性映画であると語っているが、結局のところ、いちばんまともなのはヒロインの電流少女ということか。彼女の“覚醒”に軸を置いた点にシビれた。しれーっと響く”クリープ"も効果的で技あり。
『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』監督がスーパーヒーローを描くと
『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』のガブリエーレ・マイネッティ監督が描くのは、第二次世界大戦下のイタリアでサーカス芸人をする、特殊なルックスと微妙な超能力を持つ4人。電流を自在に操る少女、昆虫たちを意のままに動かすアルビノの青年、怪力で多毛症の大男、体を磁石にできる体の小さな道化師は、ある種のスーパーヒーロー的な存在。安息の地を目指して旅する4人の姿は『オズの魔法使』を下敷きにもしている。
冒頭から、ヨーロッパのサーカス小屋の美学にささやかな超能力を掛け合わせた魅力的な光景が展開。またナチス支配下の巨大サーカスが登場、ナチスがサーカスを演出したらこうかもしれない演目の数々も見もの。