栗の森のものがたり (2019):映画短評
栗の森のものがたり (2019)森の近く、さまざまな記憶が混じり合う
チェーホフの3つの短編をモチーフに、1950年代の欧州の森を描くが、これはいつでもどこにでもある物語なのではないか。
老いて、やがて死がやってくるということが、栗の実が熟して地面に落ち、それが枯葉に埋もれて見えなくなる、ということと同じであるように描かれる。森の近くで木の家具の職人として暮らす老人がうたた寝をすると、そこに過去の思い出、民俗的な記憶、民話の情景が現れて、それらが区別しがたいものになっていく。老人の日々の暮らしは楽なものではないが、それらの光景にはどこかユーモラスな気配も漂う。そんな世界を、スロヴェニア出身の39歳、グレゴル・ボジッチ監督が柔らかな光で映し出す。
この短評にはネタバレを含んでいます