きっと、それは愛じゃない (2022):映画短評
きっと、それは愛じゃない (2022)ライター3人の平均評価: 3.3
果たして、結婚に恋愛感情は必要なのか…?
人並みに結婚願望はあるものの、ダメ男ばかりに引っかかる30代独身女性。ドキュメンタリー作家の彼女は、パキスタン系移民の幼馴染み男性が見合い結婚すると知り、その過程を取材することになる。昔に比べて出会いの機会は増えたにも関わらず、男女の未婚化や晩婚化が進むイギリス。それは恋愛至上主義のせいなのか、そもそも結婚に恋愛感情は必要なのか、見合い結婚にどんなメリットがあるのか。西洋と東洋の価値観の違いを比較しつつ、結婚の在り方そのものを模索していく。そのどちらにも偏らないバランス感覚は、監督も脚本家もパキスタン系英国人だからであろう。多民族国家イギリスの複雑な側面も垣間見えるチャーミングな作品だ。
東洋と西洋、愛についての考え方を見つめる
パキスタン(現在)出身のシェカール・カプールが長編映画を監督するのは、なんと2007年の「エリザベス:ゴールデン・エイジ」以来。この新作はライトなタッチの恋愛映画で、これまでの作品とタイプが違うが、主人公のひとりはパキスタン系イギリス人。東洋と西洋の違いというテーマには、パーソナルなものを感じたのだろう。このジャンルではいつもそうであるように、結末は簡単に予測できるが、キャストが魅力的で、彼らの人間関係、相性にも信ぴょう性があり、そこまでのジャーニーを楽しめる。それぞれの文化が持つ愛に対する考え方の違いについて、興味深い論点が挙げつつ、どちらが正しいと決めつけないのも良い。
カラフルなパキスタン流結婚の儀式が楽しい
いい人しか出てこない気持ちのいいラブコメディ。加えて、リリー・ジェームズ演じる主人公がただの幼馴染だと思っていたけど…な男性がパキスタン系英国人で、パキスタン流の結婚準備の儀式やパーティが、衣装も装飾も極彩色。カラフルで豪華な情景がたっぷりで、楽しい気分にしてくれる。
監督はイギリス領ラホール生まれ、英国で監督になった『エリザベス』のシェカール・カプール。英国人のヒロインが、パキスタン流お見合い文化に興味を抱いてドキュメンタリー映画を撮るという物語は、異文化ギャップと、恋に不器用な2人のもどかしい関係のバランス配分が程よい。ヒロインの陽気な母親役のエマ・トンプソンもいい感じ。