マダム・ウェブ (2024):映画短評
マダム・ウェブ (2024)ライター4人の平均評価: 3
ふつうに面白くちゃダメですか?
ピーター・パーカーのおじさんの若き日など明らかにスパイダーマンへの伏線を揃えつつ、そこに深く踏み込まないスタンスで1本の映画として美しく成立。「未来が見える」能力を小出しにしながら、それに対峙し、利用する主人公の成長曲線は常套とはいえ共感度を高める。マーベルの飽和状態でよほどの傑作が誕生しないと評価されない…のも理解しつつ、素直にヒーローものとして楽しめるのでは?
たしかにダコタ・ジョンソンに華がなかったり、クライマックスの重要なアクション場面のカット割りや編集が雑でもったいなかったりするが、4人のチーム結束へのプロセスが胸アツなのは間違いないし、00年代カルチャーのいろどりもテンションUP。
ジュブナイル指数の高い、スパイダーマン傍系ドラマ
21世紀の“スパイダーマン”と題した作品は、すべてジュブナイル的な要素が含まれて成立するものだったが、傍系の本作はそれを主体に据えた感がある。
大人になり切れない主人公と、3人の少女の共闘のドラマは、主人公が彼女たちの庇護者となっていくことで熱気を帯びる。クライマックスの高所でのバトルシーンは迫力があり見入ってしまった。
ヴィランの動機やキャラ設定が弱い点は物足りないが、3人の少女たちを演じた若手女優のはつらつとした快演はジュブナイル・ストーリーの魅力を伝えるに十分で、スパイダーマンの傍系としては、これはこれでアリ。
女子たちが仲間を見つける物語でもある
マダム・ウェブの誕生物語を、コミックとは別のオリジナルな発想で描く大胆な1作。ヒロインが未来の光景をビジュアルとして見るという設定で、その能力を反映したユニークな撮影法の映像が多用されている。
監督は女性ヒーロードラマ「Marvel ジェシカ・ジョーンズ」や「Marvel ザ・ディフェンダーズ」の監督・製作総指揮に参加した女性監督S・J・クラークソン。ヒロインに加えて旬の若手女優3人が出演、血縁関係の家族とはうまくいかない3人が、別の場所で信頼できる仲間を見つけていく物語でもある。挿入されるポップソングも女性ボーカルが多く彼女たちのパワーを感じさせ、彼女たちの未来の活躍ぶりが見たくなる。
ヒーロー映画だと身構えなければ
どうしてもストレートなヒーローを取り扱えないSSUの難しさといわゆる”ヒーロー疲れ”が悪い形で結実してしまった感のある一本。とは言え、実際のところそこまで、難のある映画とも思えません。ダコタ・ジョンソンが主役に据えられた時点で”オリジナルのマダム・ウェブ”でないことはわかっていたので、前情報を入れずに望んで見たら楽しく見れました。2時間弱というタイトな上映時間もあって中弛みなく楽しめました。”コントロールできない予知能力”の描写については、もう少しわかりやすいものがあってもいいのかもしれませんが…。色々と欲を出しがちなアメコミ映画ですがシンプルにできていて好印象です。