西湖畔(せいこはん)に生きる (2023):映画短評
西湖畔(せいこはん)に生きる (2023)ライター2人の平均評価: 4.5
一部で熱狂ファンもいる主演ウー・レイ、その魅力が最大限に
シャオガン監督、絵巻物のような幻想的映像美と、ゆったり流れるカメラワーク、演技未経験キャスト多用と、前作で独自の作家性を確立させたと思いきや…そこをキープしつつ、メインにはマルチ商法という超生ぐさいドラマをぶっこんできて、そのアンバランスさが逆に魅力に。人間の生命と木のそれを対比させるセリフなど一見、哲学的を装いながら、過剰にセンセーショナルな描写も入れ込み、この監督の行く先にますます目が離せなくなる。
宣伝ビジュアルは主演ウー・レイの正統派イケメンっぷりを強調しているが、そこは「宣伝に偽り、ナシ」と断言。その爽やかさ、苦悶に引き込むという点で、俳優を観る映画でもある。日本でも人気加速するか?
まさかの、マルチ商法版『レクイエム・フォー・ドリーム』
山水画ばりに息を呑む美しい光景と金に執着した人間模様を対比に描いたデビュー作『春江水暖』をアップデート! 美しい茶畑から一転、マルチ商法の世界を通し、人間の脆さや醜さを露呈していく。楽しいバス旅行の行き着く先は、この世の地獄。映像や音楽どころか作品全体が転調し、『レクイエム・フォー・ドリーム』ばりのカルトムービーに。化粧が崩れ、泣き叫ぶヒロインの姿は『ジョーカー』と化し、観る者は出口の見えない不快感に打ちのめされていく。これを中国映画界でやってしまうグー・シャオガン監督の才気に加え、タイトル&ポスターヴィジュアルのギャップなど、間違いなく今年のベストテンに入る一本だ!