映画のプロが第90回アカデミー賞をズバリ予想!
第90回アカデミー賞候補には、ギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞を含む最多13部門、クリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』が8部門、『スリー・ビルボード』は6部門7ノミネートと今年も予想が難しい賞レース! メイク・ヘアスタイリング賞に『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』で主演ゲイリー・オールドマンの特殊メイクを担当した日本人アーティストの辻一弘も受賞なるか!? アカデミー賞の前哨戦となるゴールデン・グローブ賞をはじめ、数々の映画賞での結果がどのように響くのか? 映画のプロがさまざまな角度、根拠から主要6部門を予想!
-
『シェイプ・オブ・ウォーター』 今祥枝 ★見事、パーフェクト的中達成!★
映画『シェイプ・オブ・ウォーター』は3月1日より全国公開
(C) 2017 Twentieth Century Fox-
- 本命
- 『シェイプ・オブ・ウォーター』
- 対抗
- 『スリー・ビルボード』
- 大穴
- 『レディ・バード』
総評自分で予想しておいて、こういう言い方をするのもなんだが『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞を受賞したら、オスカーもすごいなと心の底から思う。戯曲好きなのでマーティン・マクドナーのキレッキレの脚本が見事な『スリー・ビルボード』は、あらゆる面において好みであると同時にうまい! とうなるしかない。それでも、『シェイプ・オブ・ウォーター』のシンプルで豊かな映像世界は別格。ギレルモ・デル・トロの映画への愛と、物言わぬ主人公の思い。言葉にせずとも映像から全てが伝わってくる。これぞ映画。マクドナーにはぜひとも脚本賞を受賞してほしい。助演男優賞はウィレム・デフォーと迷ったが映画未見なので、一世一代の当たり役をものにしたサム・ロックウェルに。助演女優賞のアリソン・ジャネイとローリー・メトカーフも甲乙つけがたいが、どんな役でも強烈な存在感を発揮するジャネイに一票。全体としてはオスカーもいろいろと変わろうとしているんだろうなとは思いつつ。「今年のオスカーは良かった」と思えるような授賞式になるといいな。
プロフィール「日経エンタテインメント!」「女性自身」「BAILA(バイラ)」「MY STAR CLUB」ほかで映画・海外ドラマの記事を連載・執筆。当サイトでは「厳選!ハマる海外ドラマ」 「名画プレイバック」を担当。小ぢんまりした人間ドラマ&ミステリーが大好物。
今祥枝さんの映画短評はこちら
今祥枝さんのその他の記事はこちら -
-
『シェイプ・オブ・ウォーター』 小林真里 ★見事、パーフェクト的中達成!★
映画『シェイプ・オブ・ウォーター』は3月1日より全国公開
(C) 2017 Twentieth Century Fox-
- 本命
- 『シェイプ・オブ・ウォーター』
- 対抗
- 『スリー・ビルボード』
- 大穴
- 『レディ・バード』
総評アカデミー会員の数が去年もさらに大幅に増員されたため、過去の受賞ケースがもはや参考にならない新時代に突入し、予想がますます困難になりました。が、これも映画史における重要な時代の変節であり転換期ということで。それにしても今年は例年以上に、さらに地味な印象のアカデミー賞ですが、一番の激戦が主演女優賞。ワイルドで反抗期なアーティスト肌の個性派少女を熱演した若き天才女優シアーシャ・ローナンと、熟練と気迫を感じた貫禄のベテラン、フランシス・マクドーマンドの二人に同時受賞してほしいぐらい。でも、今回は円熟の極みマクドーマンドで決まりでしょうか。作品賞は『スリー・ビルボード』の可能性もあるし、個人的にはこちらのほうが好きだが、今回は映画愛もつまった半魚人ロマンスで決まりかと。しかし作品賞はそろそろ、ノミネート本数を5本に戻したほうが、アカデミー賞の価値も上がると思うのは僕だけ?
プロフィール映画評論家/翻訳家。近年はもっぱらニューヨークを拠点に活動。最近はヨーロッパ、特に昨年二度仕事で滞在したパリがお気に入り。2018年のイチオシ映画はノルウェイの青春SFミステリー『セルマ(原題) / THELMA』。
小林真里さんのその他の記事はこちら
-
-
『スリー・ビルボード』 斉藤博昭
映画『スリー・ビルボード』は公開中
(C) 2017 Twentieth Century Fox-
- 本命
- 『スリー・ビルボード』
- 対抗
- 『シェイプ・オブ・ウォーター』
- 大穴
- 『ゲット・アウト』
総評前哨戦の結果をなぞったようで不覚。でも今年はこの予想が順当ですかね。大穴予想もすんなり決定。ノミネート数からして、『シェイプ・オブ・ウォーター』の作品賞も濃厚だけど、そこまで突出した評価ではないと思われ、『スリー・ビルボード』の受賞が消えた監督賞が確定的で、この2作の痛み分けってことで。そうなるとこの5年間で、メキシコ人監督が4度の受賞! 大願成就のデル・トロがどんな本音スピーチを披露するか楽しみ。演技賞では、ティモシー・シャラメの史上最年少主演男優賞もこっそり願いつつ、やはりキャリアも重視されるアカデミー賞なのでオールドマンが盤石。トラウマレベルの“鬼母”アリソン・ジャネイの演技もオスカー好み。逆転があるとしたら主演女優賞のシアーシャ・ローナンとサリー・ホーキンス、助演男優賞のウィレム・デフォー。ここ数年、少なくなった演技賞のサプライズ、そろそろ起こってもいいかな……。そしてセクハラ問題+トランプ批判で、さらに水を得た魚になるか、ジミー・キンメルさん!
プロフィールさまざまな媒体にレビューやインタビュー記事を執筆する映画ライター。Yahoo!ニュース 個人も日々更新中。大好物はイギリス映画。アクション、ミュージカルが得意ジャンルです。アカデミー賞予想と仲間で見る授賞式は一年で最大の楽しみ。
斉藤博昭さんの映画短評はこちら
斉藤博昭さんのその他の記事はこちら -
-
『シェイプ・オブ・ウォーター』 相馬学 ★見事、パーフェクト的中達成!★
映画『シェイプ・オブ・ウォーター』は3月1日より全国公開
(C) 2017 Twentieth Century Fox-
- 本命
- 『シェイプ・オブ・ウォーター』
- 対抗
- 『ゲット・アウト』
- 大穴
- 『レディ・バード』
総評確たる本命が不在で、どの部門も難解といえば難解。しかし、だからこそ楽しい。最重要の前哨戦ゴールデン・グローブ賞の栄冠を射止めた『スリー・ビルボード』は監督賞にノミネートされていないのが痛恨。それを除けば、優位に立っているのは『シェイプ・オブ・ウォーター』だろう。個人的な思い入れを含めて本命視。俳優部門はさらに難解だが、無難な線で予想すると、こんな感じか。気になるのは、近年は若くて華のある女優が受賞する傾向にあること。そういう意味では、この予想どおりになったらインスタ映えする受賞俳優集合写真は望めない(?)が、ここ半年のエンタメ業界内におけるセクハラ問題の盛り上がりを考慮すると“華”よりも“実”を評価する流れになっても不思議ではない。授賞式ではこの問題に加え、昨年の作品賞発表時のミスや、昨年同様のトランプ政権批判などブラックジョークが横行するショーとなりそうで、そういう意味でも楽しみだ!
プロフィールアクション&ホラーを愛するフリーライター。「SCREEN」、「DVD&ブルーレイでーた」、劇場用パンフレットなどの紙媒体や、シネマトゥデイなどのネット媒体でお仕事中。今年の私的アカデミー賞受賞作は『ブレードランナー2049』。
相馬学さんの映画短評はこちら
相馬学さんのその他の記事はこちら -
-
『スリー・ビルボード』 高山亜紀
映画『スリー・ビルボード』は公開中
(C) 2017 Twentieth Century Fox総評白すぎるオスカー後のトランプ政権成立。分断に揺れる世界を尻目に昨年のアカデミー賞は『ムーンライト』を作品賞に選び、「みんなちがって、みんないい」精神を貫き通した。その究極に当たる作品が『シェイプ・オブ・ウォーター』の気がする。本来なら主演女優賞にサリー・ホーキンズを推したいところだが、いまのセクハラ問題に揺れるハリウッドにはフランシス・マクドーマンドのような、怒りの信念を持ち続けられる、決して負けない強いヒロインがふさわしい。何を言っても言わなくても、やってもやらなくても、やり玉にあげられる、セクハラ案件。ケイシー・アフレックはとっとと敵前逃亡を決め込んだが、もしも今年だったら受賞はなかった!? となると、これからの主演男優賞は安全なトム・ハンクスとデンゼル・ワシントンが、毎回ノミネートされるんじゃないかしら。戦々恐々。お祭り気分ではない、これまでとは違う授賞式。どんな瞬間も一時も見逃せない。
プロフィール女性誌を中心に執筆。WEBでは「ELLE MEN」のインタビューを担当するなど、イケメン若手俳優の眼力に定評あり。ここ数年、注目しているのは、岡山天音と柳俊太郎。宝物はライアン・ゴズリングの着せ替え人形ブック。
高山亜紀さんのその他の記事はこちら
-
『スリー・ビルボード』 中山治美
映画『スリー・ビルボード』は公開中
(C) 2017 Twentieth Century Fox-
- 本命
- 『スリー・ビルボード』
- 対抗
- 『シェイプ・オブ・ウォーター』
- 大穴
- 『君の名前で僕を呼んで』
総評抱腹絶倒した『ザ・ディザスター・アーティスト(原題) / The Disaster Artist』のジェームズ・フランコが主演男優賞にノミネートされてないじゃないか! という不平もある。でも作品賞一つとっても、どれが受賞してもOKと思えるくらい試写を観るたびに痺れまくり、感涙している。エンターテインメントの中に人種差別問題や政権批判など作り手の主張がしっかり投影されており、力強さが違うのだ。おそらく本命・対抗・大穴にあげた3作が賞に多数絡んでくると思うが、スティーヴン・スピルバーグ監督『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』だって例年なら受賞してもおかしくないくらいの出来栄え。いつにも増して、対して日本アカデミー賞は……という歴然とした差異に打ち砕かれている。個人的には己を消してチャーチルになりきったゲイリー・オールドマンのノミネートが小躍りするくらいうれしい。その特殊メイクを担当した辻一弘さんのメイク・ヘアスタイリング賞受賞の朗報も合わせて期待大。
プロフィール1969年生。映画ジャーナリスト。「GISELe」、「週刊女性」のほか、テレビ好きが高じて朝日新聞「よこしまTV」を執筆中。ケン・ローチやアキ・カウリスマキなど抑圧された社会の中で逞しく生きる主人公を描いた作品が好き。
中山治美さんの映画短評はこちら
中山治美さんのその他の記事はこちら -
-
『スリー・ビルボード』 前田かおり
映画『スリー・ビルボード』は公開中
(C) 2017 Twentieth Century Fox-
- 本命
- 『スリー・ビルボード』
- 対抗
- 『シェイプ・オブ・ウォーター』
- 大穴
- 『レディ・バード』
総評混戦と言われている上に、セクハラ騒動の影響が大な今年の賞レース。当然アカデミー賞も揺れそうですが、だからって急速にのし上がってきている『レディ・バード』が作品賞を取るかというと小粒だし。というわけで、ゴールデン・グローブ賞に続いて『スリー・ビルボード』の流れになると思う。監督賞は『シェイプ・オブ・ウォーター』でオタク愛と希望の詰まった唯一無二の世界を見せてくれるデル・トロに。主演男優賞は、チャーチルになりきったゲイリー・オールドマンが絶対獲る! ただ『ファントム・スレッド』で引退を宣言しているダニエル・デイ=ルイスが気になる。作品は未見ですが、凝り性な人だけに、1年間みっちりと裁縫技術を学んだ末、ドレスを縫えるまでになったとか。有終の美を飾らないとも限らない……。波乱があるとしたら主演女優賞。でも絶対にないであろうメリル・ストリープの受賞。だったらさ、後進のためにも賞を盛り上げるためにも、メリル枠としてほかの人に譲ったらどうでしょう。
プロフィール映画&海外ドラマライターとして、「DVD&ブルーレイでーた」、「日経エンタテインメント!」、「SCREEN」ほかさまざまな媒体、海外ドラマのムック本などで執筆。激渋オヤジ奮闘系が好きなので「ウィンストン・チャーチル」を演じるゲイリー・オールドマンの諦めない姿に狂喜乱舞。感涙!
前田かおりさんのその他の記事はこちら
-
-
『スリー・ビルボード』 森直人
映画『スリー・ビルボード』は公開中
(C) 2017 Twentieth Century Fox-
- 本命
- 『スリー・ビルボード』
- 対抗
- 『シェイプ・オブ・ウォーター』
- 大穴
- 『レディ・バード』
総評基本的には堅いラインに、自分の好みが若干混じってるという例年どおりのバランスで選出。予想としては7割当たれば満足です。『スリー・ビルボード』はアメリカ社会のローカルな舞台に「世界の縮図」を圧縮したハイボルテージの傑作で、もしフランシス・マクドーマンドとサム・ロックウェルが受賞を逃したら暴動が起きるんじゃないかな(笑)。ただ『オール・ザ・マネー・イン・ザ・ワールド(原題)』のクリストファー・プラマーの評判の勢いがすごいので、助演男優賞は逆転劇があるかもしれません。個人的な好みとしてはグレタ・ガーウィグ監督の『レディ・バード』がお気に入り(主演のシアーシャ・ローナンも最高でした)。ただパーソナルな作風なので、社会的な広がりの点でオスカー受賞にはちょっと弱いと判断されるかも。それでもなるだけ頑張ってほしいですねえ。挙げたくて挙げられなかったのは『ゲット・アウト』と『ダンケルク』。後者のクリストファー・ノーランには監督賞を獲ってほしいんですが、評価は技術系のほうに固まるかなと。
プロフィール「週刊文春」、「TV Bros.」などでクロスレビュー担当。「朝日新聞」、「キネマ旬報」、「映画秘宝」、「MEN'S NON-NO」などでも定期的に執筆中。主に若手・新人推しの姿勢ですが、最近はベテランの凄さに圧倒されることも多し。
森直人さんの映画短評はこちら
森直人さんのその他の記事はこちら -
-
『スリー・ビルボード』 山縣みどり
映画『スリー・ビルボード』は公開中
(C) 2017 Twentieth Century Fox-
- 本命
- 『スリー・ビルボード』
- 対抗
- 『シェイプ・オブ・ウォーター』
- 大穴
- 『レディ・バード』
総評“白すぎる”批判を受けてアフリカ系が躍進した昨年に続くテーマは、#MeToo? と思ったけど、監督賞候補にグレタ・ガーウィグを入れてお茶を濁したね。ただオリジナル脚本賞かな? この部門は『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』も応援しているから複雑な気分です。今年は戦況がなかなか読みきれないけど『スリー・ビルボード』と『シェイプ・オブ・ウォーター』が突出しているのは明らかで、作品賞と監督賞をシェアするような気が。主演女優は実はシアーシャ・ローナンとサリー・ホーキンス推しなので、「フランシスはもう持ってるからいいじゃん」と考えるアカデミー会員がいたら、2人にも勝機が回ってくるかも。ゲイリー・オールドマンのチャーチル演技は非常にエキサイティングで、彼以外の受賞は考えられません。特殊メイクを担当した辻一弘さんも受賞確実でしょう。本当に素晴らしかった! 『レディ・バード』を観た直後はローリー・メトカーフに傾いたけど、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』でアリソン・ジャネイが演じた毒母ぶりに降参。わたしのママがあんなじゃなくてよかった。ホッ。
プロフィール「anan(アンアン)」や「GQ」、「25ans」、「ELLE」などで映画レビューやインタビューなどを執筆。ゴールデングローブ賞授賞式でのブラックドレス+Time’sUpピン、グラミー賞授賞式での白バラと#MeTooを盛り上げるイニシアティブが続き、オスカーでの行動が楽しみです。
山縣みどりさんの映画短評はこちら
山縣みどりさんのその他の記事はこちら -
ライター9名の予想!
受賞結果は日本時間3月5日に発表!
- 全員一致!
-
★Winner★ギレルモ・デル・トロ 『シェイプ・オブ・ウォーター』9票
- 全員一致!
-
★Winner★ゲイリー・オールドマン 『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』9票
- 全員一致!
-
★Winner★サム・ロックウェル 『スリー・ビルボード』9票