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ウエスト・サイド・ストーリー (2021):映画短評

ウエスト・サイド・ストーリー (2021)

2022年2月11日公開 156分

ウエスト・サイド・ストーリー
(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

相馬 学

ディテールにスピルバーグのこだわりを見る

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 基本的にはオリジナルの忠実な焼き直しだが、都市開発による瓦礫の山のショットからギャング団の抗争へと展開するオープニングに、リメイクの意味がある。

 要所・要所はオリジナルを踏まえ、歌と踊りのスペクタクルをこれでもかと拡張。一方で、人種対立の無益というテーマは抑えられているが、それを生むのが体制側の都市開発であることを思うと興味深い。ストリートに勝者はいない。結局、誰もが敗者なのだ。

 オリジナルではあいまいだったレイプの描写や、ギャングに入りたい女の子のトランスジェンダー的設定など現代目線のディテールも多い。そういう意味でもスピルバーグの野心を見た気がする。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

画面に"映画ならこう描く"という意思が漲っている

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 1961年製作の『ウエスト・サイド物語』と比べて見ると面白い。とくに映像面。街とストリートを強調する画面作りは大方の予想通りだが、思った以上に"スクリーン上で起きたら楽しいこと"、それも"動き"を伴うことがたっぷり盛り込まれている。例えば、少年たちがストリートを歩く時、彼らはトラックを見かけると荷台に駆け上がり、トラックの荷台のフチが外れて、そこから鮮やかな色取り取りの果実がこぼれ落ちる。すると、画面が躍動する。61年版は人気舞台の映画化なので、舞台の魅力を映し出すことを重視したのだろうが、本作はおそらく違う。画面に"映画ならこう描くのが楽しい"という映像作家スピルバーグの意思が漲っている。

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くれい響

時代を反映した超リメイク

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

かなりオリジナル(1961年版)に忠実ながらも、ある意味オリジナルを上回っているスピルバーグ監督による超リメイク。なにしろ、吹替えだった旧作と異なり、役者本人が歌唱しているところに迫力&本気度を感じさせ、旧作でアニータを演じたリタ・モレノが製作総指揮でクレジットされているガチっぷりもあり、今度はアリアナ・デボーズが演じる彼女の存在が圧倒的! しかも、モレノ自身がヴァレンティナという旧作では男性キャラだった街のご意見番的な役を演じるほか、何より旧作では曖昧な存在にしか見えなかった「ジェット」に入団したいエニィバディズが存在感を放つ。そんな時代を反映したアップデートにも注目したい。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

”映画らしさ”を堪能しましょう!!

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

何をもって映画を”映画”とするかは大変難しいのですが、この映画を見終わったときに素直に「これぞ映画だ!という映画を観たぞ!!」という気持ちになりました。
映画らしい映画と言えばいいのでしょうか?
ミュージカル初挑戦の監督スピルバーグと撮影ヤヌス・カミンスキーのゴールデンコンビですが、”ちゃんと以上”のミュージカルを撮り上げてしまうものですがから、恐れ入りました。シンプルなストーリーなだけに、作り手、演じ手の技量が透けて見えるのですが、この映画は大変な満足感をまとった作品に仕上がっています。

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猿渡 由紀

完成度は高いが、根本的な部分に無理がある

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

歌もダンスも美しく、文句なく完成度は高い。プエルトリコ系俳優をキャストする、彼らの会話にスペイン語を取り入れる(しかも字幕なしで)など21世紀らしいアップデートもされている。コンサルタントも雇ったそうで、そこには誠意を感じるが、やはり「よその人が作った映画」なのである。そこが「イン・ザ・ハイツ」との決定的な違い。当事者ではないユダヤ系の男たちが考案した話をリメイクしたのは、ユダヤ系の男たち。お金がかかっていてすばらしいだけに、「ロミオとジュリエット」にもとづく恋愛話が余計に古く、不自然に感じるのも皮肉。もちろんそこを変えるわけにはいかないので、これはこれで限界だろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

完成度は100%以上。あとは、それをどう受け入れるかだ

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

偉大すぎる名作の再生として、これ以上ない重厚な職人技。
いくつかのナンバーは、カメラの動き、編集、振付とダンサーの技量で、ミュージカル映画として最高級のテンション上げを実感する。オリジナル舞台版、および1961年の映画の演出にそれぞれ目配せし、特に振付は当時のJ・ロビンスの革新性への敬意と、斬新な動きの融合が相乗効果。奥行きや高低差、左右の広がりなど、決めるべきシーンでのスピルバーグの視点は観る者を引き込む魔法を心得る。
時代の再現、色調も含め、全体に貫くクラシカルなムードは逆に新鮮。現代に通じるテーマが強調されるかと思いきや、押し付けがましくなく見やすく、そこはもっと冒険しても良かった気も。

この短評にはネタバレを含んでいます
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