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アムステルダム (2022):映画短評

アムステルダム (2022)

2022年10月28日公開 134分

アムステルダム
(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.5

くれい響

見どころは悪趣味全開な導入部

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

豪華キャストの使い方や会話劇中心で展開される箱庭感がウェス・アンダーソン監督っぽくも感じる、デヴィッド・0・ラッセル監督作。ラッセル監督とは三度目のコラボとなるクリスチャン・ベイルの義眼ポロリやしっかりグロな検死シーン、そして呆気なさすぎるテイラー・スウィフトの退場と、悪趣味全開な導入部に引き込まれる。テーマやプロットは面白いものの、核心に迫るにつれて、脱力系サスペンスとしての緩さが空回りし始め、ラッセル監督が得意だったはずの群像劇としてもグダグダに。デ・ニーロ危機一髪なクライマックスも、舞台劇ばりに意外とあっさり終焉を迎えるなど、IMAX版で観ても映画的醍醐味に欠ける。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

『スリー・キングス』の切れ味を想起させる快作

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 アカデミー賞ノミネートの常連ラッセル監督の作品が日本の劇場で公開されるのは、何気に久しぶり。まずは復活を素直に歓迎したい。

 出世作『スリー・キングス』を連想させる、固い絆で結ばれた男女3人の共闘。アップテンポで描かれる、そんなドラマは2時間超えの尺の長さをまったく感じさせない。次々と登場する豪華キャストの賑やかさも、それにひと役買っている。

 映像面で面白いと思ったのはキャラクターの顔のアップが、とても多いこと。人間の顔が左右対称ではないことを改めて認識しつつ、表情のとらえ方のユーモアを楽しんだ。とりわけ、男優陣のファニーな雰囲気がイイ。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

こっちにもあっちにも人気スターがいっぱい

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 この監督独自のユーモア感覚で描かれる、拝金主義者が独裁者を求める世相は現代そのもので、その意味でも"ほぼ実話"。そして目を引くのが人気スターたちの大挙出演ぶり。え、これってあの俳優?と目を疑っている間も無く、次から次へ注目俳優たちが出現、それを見ているだけで楽しい。マーゴット・ロビーとアニャ・テイラー=ジョイの口喧嘩、マイク・マイヤーズとマイケル・シャノンの掛け合いなど、顔合わせの妙も見もの。
 デヴィッド・0・ラッセル監督とクリスチャン・ベイルは『ザ・ファイター』『アメリカン・ハッスル』に続くタッグで、お互いに相性がいいと思っているのではないか、ベイルが他ではあまり見ない軽妙な佇まい。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

演技派たちが“顔面”芸で魅せる。テイラー・スウィフトは逆で…

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

相変わらず肉体改造してる感アリアリのクリスチャン・ベールが“義眼”を強調した顔面芝居で圧をかけるなど、インパクト強のキャストたちのアップが多用されるなか、むしろ没個性に徹したテイラー・スウィフトが逆に新鮮で演技巧者に見えたりも。
刑事や敵の俳優に「あの人だったか!」と発見する喜び。
ただ、事件のほとんどが会話劇メインで進む印象のため、閉塞感・停滞感に戸惑う人も多いはず。そのため世界の運命を変えた驚きの実話のはずが、映画的カタルシスやダイナミズムは物足りない気が。登場人物たちの絆がエモーショナルに迫ってきそうでドライに演出されたり、このあたりもデヴィッド・O・ラッセルの作家性として受け止めたい。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

オールスター映画なのに、濃厚なクセスゴ監督の味

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

まずテイラー・スウィフトの扱い方にウケたが、中味はデヴィッド・O・ラッセル監督の個性が過剰なまでに全開。『スリー・キングス』以来の巨大な風刺を、『ハッカビーズ』ばりの奇人変人群像として、狂騒的リズムで描くポリティカルスリラー&コメディ。初タッグとなる名手ルベツキのカメラを得て、歴史の裏側を個的な視座から抉る独特のフィクション作法を支持したい。

最大のキーパーソンはR・デ・ニーロ演じるギル将軍で、モデルは“War is a Racket”(戦争はいかがわしい商売だ)との檄文で知られる米海兵隊のスメドリー・バトラー少将。1933年の委員会の告発パートなどロバート・アルトマン系譜の反骨がしっかり。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

デヴィッド・O・ラッセルの大仕事

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

デヴィッド・O・ラッセルが大仕事をやってのけたな!といった感のある賞レース候補の声も納得の逸品。5年もの期間の下準備もしっかりと伝わってきます。メインの三人にはもちろん隅々まで豪華なキャストが詰め込まれていて、ある人物などあっさりとした登場で終わったりする豪華仕様。
フィクション部分もあるとはいえ実話のところも多分にあり、しかもそれが”今”に通じる部分があるためにとても”芯を喰った”映画でした。
そしてクライマックスのデ・ニーロは久しぶりに”痺れるデ・ニーロ”でした。

この短評にはネタバレを含んでいます
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