ドント・ウォーリー・ダーリン (2022):映画短評
ドント・ウォーリー・ダーリン (2022)ライター6人の平均評価: 3.2
全編を包む不穏なムードと、映像&俳優のキラキラ感の化学反応
冒頭で限りなく不穏な展開を予感させ、そこから一転、キラキラの陽光、おしゃれで幸せな生活、カラフルなプロダクションデザインで夢見心地にさせるマジックが鮮やか。
激動運命に翻弄されながら逞しく立ち向かう、もはやこの手の役は十八番となったフローレンス・ピューの勇姿が若手トップの旬を感じさせ、夫役ハリー・スタイルズは、いい意味での不安定なムードが役にマッチ。俳優を愛でる一作でもある。
オリビア・ワイルド監督は、挑発的な演出、アクション場面でサービス精神旺盛。
ただ、映画ファンなら似たようなシチュエーションの作品が頭をよぎり、どこか既視感をおぼえ、そこから突き抜けていかないもどかしさも感じるような…。
居心地の良さに騙されて生きるより、真実が知りたい!
カンパニークレジットがなければA24製作と思えそうな、実験的で野心的なスリラー。居心地が良さそうで、実はあまり良くない世界を舞台にしているのがミソ。
『トゥルーマン・ショー』『マトリックス』などから発想を得たとO・ワイルド監督は語るが、なるほど、快適なニセの社会よりも真実の探求を選ぶ人間の潔さが、よく表われている。それをスリラーの形式に落とし込んだ手腕も見事。
もちろん、ただのジャンル映画には終わらず、女性が抱える社会的問題にも言及しており、そういう点でもワイルドの視点の鋭さが見て取れる。『ブックスマート~』とはまったく異なるテイストだが、コレはコレで見応えアリ。
魅力的なビジュアルと演技で見せる
オリヴィア・ワイルドの監督第2作目は、前回よりずっと野心的。ミステリアスなことが続々起こって緊張感を高めるのだが、突っ込みどころもあって、“秘密”がわかってからもいろいろ疑問が残る。映画の中に散りばめられたフェミニスト的メッセージも埋もれてしまった。プロダクションデザイン、衣装など、ビジュアルはとても魅力的。「どこかおかしい」という雰囲気を上手い具合に醸し出している。演技も良い。フローレンス・ピューは今回もさすがだし、いつもと違う役に挑むクリス・パインも光る。ハリー・スタイルズも悪くないが、当初の予定通りシャイア・ラブーフだったらどう違っていたかのか、つい想像してしまう。
またも“理想郷”でフローレンス・ピューが!
今や不穏な空気が似合う俳優、フローレンス・ピューだが、またも“理想郷”ともいえる場所で、気付いてはいけないことに気付いて、さぁ大変! 彼女が演じるヒロインの名がアリスだけに、いろいろ想像できるが、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』のオリヴィア・ワイルド監督を起用し、新たな『ステップフォード・ワイフ』に挑んでみた印象が強い。とはいえ、ジョーダン・ピール監督作~「ワンダヴィジョン」後だと、そのインパクトも弱め。本作にも友人役で出演しているが、役者出身の監督としてはかなりの逸材だけに、トーマシン・マッケンジーが実在の五輪体操選手を演じる次回作に期待したい。
ヒロインが見る悪夢的な光景が興味深い
長編監督デビュー作『ブックスマート 卒業前夜のパーティデビュー』で、監督として注目を集めたオリヴィア・ワイルドの長編2作目。脚本は、同作の脚本家4人中の1人、ケイティ・シルバーマンが担当するが、作品のタイプはまったく違う寓話的物語。
ストーリーはほぼ予告編から想像される通りだが、注目したいのは、ヒロインが感じている違和感や閉塞感が、どのような映像として表現されるのかという部分。彼女のごく当たり前の行動が、何のきっかけもなくふと異様な事態に変貌する。瞳の虹彩の形がバズビー・バークレーのミュージカルの悪夢版的な群舞に変容していく。これらの表現に反映されたワイルド監督の感覚が興味深い。
予想の斜め上
チラシにもユートピアサスペンスの文字があるので、そこまでは言っていいのだと思います。そこから先は何も言えない映画です。最初から不穏な空気、微妙なズレを感じて”いったい何を見せられているのだろう?”という気持ちのまま映画がドンドン進んでいくのですが、予想をあれこれ張り巡らしたうえで、その斜め上を繰る展開に素直に楽しみました。オリヴィア・ワイルドのふり幅の広さに驚かされます。表情豊かなフローレンス・ピューのヒロインのキャラクターも良かったです。クリス・パインのこういう役どころあまり見ないので新鮮でした。いろいろ考えながら映画館へ是非!