テリファー 終わらない惨劇 (2022):映画短評
テリファー 終わらない惨劇 (2022)ライター5人の平均評価: 3.4
なんで、どうして138分!?
前作の続きから始まる本作、ピエロ殺人鬼が初めて「アート・ザ・クラウン」と名付けられる。アートが次々惨殺していくことに変わりはないが、今回はシングルマザー家庭の姉弟の物語がしっかり軸になっているだけに、前作に比べ1時間近く長い(笑)。だが殺し方がヴァリエーション豊富なので、これが結構飽きさせないのだ。湿度も低くカラッとしてるので、スプラッターゴア映画に慣れている人にとって吐くほどの衝撃はないだろう。後半はファンハウスが舞台となり、トビー・フーパーへのオマージュ再び。ただファンタジー要素が本当に必要だったのかは疑問で、やや無理矢理な感は否めない。ちなみにこの監督、エド・ウッドも大好きなんですね。
ストーリーもスプラッターもレベルアップしたシリーズ第2弾
ピエロの格好をした謎の殺人鬼「アート・ザ・クラウン」が、ハロウィンの夜に人を殺しまくる血みどろスプラッター第2弾。前作はストーリーらしいストーリーのないシンプルなスラッシャー物で、上映時間も90分以下と昨今珍しいコンパクト仕様だったが、今回はなんと2時間越えの長尺!ストーリーにもダークファンタジー的な要素が加わり、最愛の父を失って関係のギクシャクした姉弟が、不死身の殺人鬼に立ち向かうことで失いかけた絆を取り戻していく。もちろん、徹底的に容赦のない人体破壊描写は健在…いや、さらに盛りだくさんと言うべきか。無名の役者陣も軒並み好演で、中でもヒロイン役ローレン・ラヴェラの健闘は特筆すべきだろう。
アート・ザ・クラウンがフレディ化!
前作ラストで、人間ではないことが判明したアート・ザ・クラウンの“ひたすら殺人ショー”第2幕。前作から一年後、今度は家族のドラマがしっかり描かれ、おなじみ顔面崩壊などの被害に遭うキャラのIQもちょい高めに。そんななか、クラウンが夢の中のコンカフェに現れる神出鬼没感や“ひと仕事”終えてコインランドリーで洗濯しながら全裸待機というシュールなギャグなど、『エルム街の悪夢』を意識したテイストに。クラウンに果敢に立ち向かい、やがて覚醒するヒロイン・シエナの姿もナンシーを思い起こさせるなか、『ファンハウス/惨劇の館』オマージュへ突入。138分だけに冗長さは否めないが、作品のクオリティは確実に上がっている。
現実と夢を飛び越えて、ホラー大作に進化した続編
70年代ホラーにオマージュを捧げた前作『テリファー』と同様のタッチ。異なるのは、前作が90分強のジャンル映画だったのに対して、この続編は140分弱の大作であること!
前作のラストでは殺人ピエロ、アートが不死身であることが示唆され、『ハロウィン』のブギーマンのように成長すると思いきや、夢にまで出現するのだから『エルム街の悪夢』的でもある。現実と幻想の境目もあやふやにする。このシュールな展開が妙味。
人体損壊描写も凄まじく、6年ぶりの続編なのにテンションがまったく落ちていないのは、コロナ禍前に撮影を終えていたという事情もあるか。長尺だが、ダレる間はまったくない。
身体が玩具のように壊されていく
身体の破損度が、常に、かなり激しい。全米で話題になったこのスプラッタ映画は、身体を玩具のように切断し、引きちぎり、剥ぐ。監督・脚本のデイミアン・レオーネは特殊メイク・特殊造形アーティストで、CGを使わない表現にこだわった手触り感が画面から伝わってくる。
監督のもう一つのこだわりが、白塗りピエロ姿の殺人鬼。パントマイム風の笑える仕草をしてみせるのが、逆に忌まわしい。似たピエロ姿のキャラは前作『テリファー』(16)だけでなく、短編『Terrifier』(11)、『All Hallows' Eve』(13)にも。監督のこの姿に対する何か個人的な思い入れが感じられたりもする。