ロイヤルホテル (2023):映画短評
ロイヤルホテル (2023)ライター3人の平均評価: 4
「どこにでもある光景」が持つ暴力性について
#MeToo運動を受けた傑作『アシスタント』に続き、K・グリーン監督が主演のJ・ガーナーと再び組んでワンセットの如き快作を放った。前作がNYのショービズ業界なのに対し、今回は豪州の砂漠にある寂れたパブ。真逆の様な都会と田舎だが、男性優位の有害は同じ。スリラーやホラーといったジャンル映画の作法を応用し、心理的負荷を我々に当事者感覚で体感させる。
ワーキングホリデーやパーティを楽しみたい、という当たり前の欲望に巣食う罠、恐怖や圧力のメカニズムを示した“教材”としての精度は『HOW TO HAVE SEX』とも共通する。結末など過激なようだが、フェミニズム映画の成熟を示す最新の好例ではなかろうか。
前作に続き、女性が直面する状況を鋭く突く
「アシスタント」に続き、キティ・グリーンとジュリア・ガーナーが実社会で若い女性たちが直面するセクハラ、搾取などについてまたもや鋭く切り込む。前作の舞台がニューヨークの映画会社だったのに対し、こちらはど田舎のパブなので、女性を性の対象としてしか見ない態度、女性蔑視、有毒な男らしさは、よりあからさま。元ネタであるドキュメンタリー「Hotel Coolgardie」で実際にとらえられた出来事も多数使われているが、この映画ではより危機感、恐怖が高められ、ドラマチックに。元ネタと大きく違うラストは、映画的ではあるかもしれないが、エンパワメントを感じさせてくれる。次の作品が待ちきれない監督のひとり。
行きつく先は、“地獄の『コヨーテ・アグリー』”
『胸騒ぎ』に続き、お国柄の違いが問題を巻き起こすサスペンス。舞台はジェンダー平等が進むオーストラリアにして、ボーガン(荒くれ者)たちが集う炭鉱町のパブというのがミソ。ヒューゴ・ウィーヴィング演じる下衆いオーナーの下、前作『アシスタント』同様、ジワジワと危険が忍び寄るキティ・グリーン監督の演出だけに、田舎ホラーという見方もでき、まさに“地獄の『コヨーテ・アグリー』”な状況。とはいえ、男連中全員が全員悪人でもないことで、2人のヒロインは逃げるわけでもなく、「ここから立ち去るべきか否か?」という問題に直面。そこに焦点を当てたことで、いろいろブレてしまった感はアリ。