ランボー ラスト・ブラッド (2019):映画短評
ランボー ラスト・ブラッド (2019)ライター7人の平均評価: 2.9
シリーズの魂は消えず。壮絶さをどう受け止めるか?
前作が美しい完結と個人的には感じていたが、やはりスタローン、ロッキー役と同様に永遠に演じ続けたいという気概が微笑ましい。「ランボー」シリーズは孤独な戦いはもちろん、主人公の過激な「受難」が共通点だが、今回、老いたランボーは敵にボコられまくる。その姿は過去作以上にリアルに痛々しい。
お待ちかねは、見るも無残なバイオレンス描写で、スタローンはその負の部分を訴えたかったと聞くが、80年代の映画なら許容範囲でも、2020年に観るには感覚的、ポリコレ的に賛否ある「見るも無残」と感じたが…。復讐のきっかけ作りとして、弱い者が虐げられる構図も、わかりやすいが安易で辛すぎる気も。エンドロールには素直に拍手!
孤高の男が老境で悟った、真の自分とは!?
前作『ランボー 最後の戦場』がバイオレンスたっぷりの力作だったので、そのノリを踏襲するかと思いきや、今回は変化を付けてきた。
たとえばシリーズで初めて、戦場を密林や荒野ではなく都市や屋内に据えたこと。しかもクライマックスは異国ではなく、祖国のマイホームだ。トラップを駆使したゲリラ戦の見せ場はあるものの、舞台面の定石を覆した点は新味と言えよう。
ドラマ的には、ランボーのアイデンティティに深く切り込んでいる点に注目。彼の下した人生の結論は観客の好き・嫌いが分かれそうだが、1作目から”地獄が故郷”と言われてきたランボーには、ある意味ふさわしいのかもしれない。
多分、これが最後なので、見届けました!
孤独を抱えた元グリーンベレー隊員ランボーの戦いの日々に終わりはなかった! 最後のミッションは、娘のように可愛がっていた少女のための復讐で、ベトコンと戦った原点に戻る。武器はトラップだらけの地下トンネル、お得意の弓矢、自ら鍛え上げたナイフなどなど。70代のランボーだが、負ける気はしない。アフガニスタンでソ連軍と、その次にはミャンマー軍と戦ったランボには味方がいたが、今回はぼっちバトル。これも原点回帰である。本シリーズが強いアメリカを望む共和党支持者の時代感を掴んでいるのは確かだし、麻薬カルテルとの戦いはトランプ大統領の口約束の体現のよう。そして最後は西部劇のヒーローを思わせました。
クライマックスは血みどろ版『ホーム・アローン』
一応、スタローンがランボーを演じるのはこれが最後とされるシリーズ第5弾。故郷アリゾナの牧場で平穏に暮らしていたランボーだが、しかし父親代わりとして育てた女性が誘拐されたことから、極悪非道なメキシコの人身売買組織を相手に戦うこととなる。ストーリーはどこかで見たような展開の連続だし、メキシコの描写(ロケ地はブルガリア)もステレオタイプの偏見だらけだが、ありとあらゆるトラップを仕掛けた我が家へ敵を誘い込んで一網打尽にする終盤は痛快そのもの。人体破壊描写のスプラッター指数もハンパなく、まるで血みどろ版『ホーム・アローン』だ。必要な続編だったかは疑問の余地ありだが、このラストで十分に元は取れるだろう。
ふたたび、「一人だけの軍隊」
前作『最後の戦場』で裏切られ続けた祖国に帰還し、見事な終幕を迎えたと思わせての延長戦! 仮題だった“The Savage Hunt”通り、“ランボー/怒りの『ホーム・アローン』”と化すまで、ひたすら耐えて、耐えまくる。そんな“スライ版『狼よさらば』”な展開は、日本人好みといえるかもしれないが、1作目の原作タイトルが「一人だけの軍隊」だったように、まさに原点回帰といえるだろう。前作でド肝を抜いたゴア描写を踏襲しながら、バックに流れるドアーズの「Five to One」が突き刺さる。賛否真っ二つなのも分からなくもないが、シリーズ総括のエンドロールまで見届ける価値はアリ。ご祝儀で、★おまけ!
戦士は戦場を呼ぶ
本当かどうかはわかりませんがシリーズ完結編とのこと。
前作で故郷に帰ったランボーがどうやったら闘いの場に身を置くことになるのか?
その結果が疑似家族がメキシコの麻薬・人身売買カルテルの標的になってしまうという展開でした。
詳細はネタバレになるので伏せますが、アメリカ国内で戦場を創り出すには『ボーダラインン』シリーズと同様この舞台設定が定番になりつつありますね。
以外にもランボー(スタローン)が迎え撃つ展開はレアでした。
前作『最後の戦場』同様R-15指定と言うことで、バイオレンス描写に遠慮がないのもいいですね。
ラストシーンは思い切り『シェーン』ですね。
エンドロールも必見です。
ある意味、裏切らない
ラジー賞で『キャッツ』と共に物議を醸し出した評判は真実。いやそれ以上かも。特筆すべきは「人命軽視と公共物破壊しまくり賞」の受賞で、ボコ・ハラムのような世界各地で起こっている女性蔑視の人身売買集団への怒りが作品の根底にあったとしても、やり過ぎ感は否めない。ただ確かに一昔前なら、多少の荒療治でもヒーローの勧善懲悪に拍手喝采を送り、溜飲を下げた人が多かったワケで、そういう意味では我々の暴力描写に対するメディア・リテラシーが向上してきたとも言えるし、製作側が時代の変貌を読みきれなかったとも言えるだろう。元々はベトナム戦争の傷を露わにした当時としては画期的な大作だった。そのテーマを貫いて欲しかった。