映画のプロが第92回アカデミー賞をズバリ予想!
第92回アカデミー賞候補は、ホアキン・フェニックス主演の『ジョーカー』が最多11部門にノミネート! それに続くのは、ゴールデン・グローブ賞作品賞(ドラマ)を受賞したサム・メンデス監督『1917 命をかけた伝令』、同じくゴールデン・グローブ賞作品賞(コメディー/ミュージカル)を受賞したクエンティン・タランティーノ監督『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』、さらにマーティン・スコセッシ監督『アイリッシュマン』も10部門で候補に。カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞し、韓国映画として初の作品賞ノミネートのポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』にも注目だ。またメイク・ヘアスタイリング賞では『スキャンダル』でシャーリーズ・セロンらの特殊メイクを担当した日本人アーティスト、カズ・ヒロも受賞なるか!? 映画のプロがさまざまな角度、根拠から主要6部門を予想!
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『1917 命をかけた伝令』 今祥枝 ★惜しくも5部門的中!★
(C) 2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.-
- 本命
- 『1917 命をかけた伝令』
- 対抗
- 『パラサイト 半地下の家族』
- 大穴
- 『ジョジョ・ラビット』
総評今年は『パラサイト 半地下の家族』がどこまで頑張れるかに注目。昨年の『ROMA/ローマ』のように国際長編映画賞と監督賞を受賞、作品賞は別というパターンになりそうだけれど。現実的な予想としては、本命は王道感があって全米プロデューサー組合賞の長編映画部門受賞の『1917 命をかけた伝令』。俳優陣は波乱があるとすれば映画は未見だがアントニオ・バンデラスあたり? 『マリッジ・ストーリー』が前哨戦でも思ったより目立たないのが意外。でもスカーレット・ヨハンソンは『ジョジョ・ラビット』で応援したい。ほか『フェアウェル』&オークワフィナ、『パラサイト 半地下の家族』のソン・ガンホ、『ルディ・レイ・ムーア』&エディ・マーフィ、『ハスラーズ』のジェニファー・ロペスが候補入りせず残念。ともあれ会員の多様化を推進してきたオスカーが今年はどんなメッセージを世界に発信できるのか、楽しみですね。
プロフィール「日経エンタテインメント!」「小説すばる」「yom yom」などで映画・海外ドラマの記事を連載・執筆。当サイトでは「幻に終わった傑作映画たち」「間違いなしの神配信映画」「厳選!ハマる海外ドラマ」を担当。小ぢんまりした人間ドラマ&ミステリーが大好物。
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『1917 命をかけた伝令』 小林真里
(C) 2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.総評昨年の『ROMA/ローマ』同様、Netflix製作の映画が作品賞を受賞する可能性は低いと思うので『アイリッシュマン』は難しそう。そうなると、賞レースの終盤をリードする『1917 命をかけた伝令』と『パラサイト 半地下の家族』が有力。韓国映画『パラサイト』にハリウッドの歴史を塗り替えてほしいところだが、果たして? ハリウッドの歴史を映画で書き換えた、オールスターキャストによる痛快フェアリーテイル『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』も侮れない。監督賞はかなり悩んだが、サム・メンデスとポン・ジュノの一騎打ちか。主演、助演の俳優部門はサプライズはなさそう。個人的には昨年のトロント国際映画祭で鑑賞し、ゴールデン・グローブ賞(外国語映画賞)にもノミネートされたフランスの『ポートレイト・オブ・ア・レディ・オン・ファイア(英題) / Portrait of a Lady on Fire』が2019年のベストムービーでした。
プロフィール映画監督/映画評論家。昨年日本公開された監督作『BEYOND BLOOD』(2018)に続く、新作ドキュメンタリー映画が間もなく完成。次は劇映画に移行し、昨年から海外で進めているプロジェクトに今年は集中します。
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『パラサイト 半地下の家族』 斉藤博昭
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- 本命
- 『パラサイト 半地下の家族』
- 対抗
- 『1917 命をかけた伝令』
- 大穴
- 『ジョーカー』
総評前哨戦でやや『1917 命をかけた伝令』が有利になってきたとはいえ、作品賞は例年以上の混戦のまま授賞式になだれ込みそう。というわけで主要6部門を別作品でバラけさせるというチョイスに。投票までの駆け込みで観るアカデミー会員が、『パラサイト 半地下の家族』の空前の面白さに気づくのでは……と、無謀な祈りがどこまで通じるか? そして監督賞は、シンプルに「演出」を評価。もしかしたら作品賞と監督賞が真逆の可能性もありそう。タランティーノは演出という点ではやや不利なので、あるとしたら作品賞でしょう。最大のギャンブルは主演女優賞。ここまでの流れではレネーが確定的だが、個人的にあの表面的な演技に納得できないのと、彼女の業界内のそんなに高くない評判を加味し、「白すぎるオスカー」への抵抗がここに表れることを予感。『ハリエット』のシンシアは「体当たり」という表現がぴったりだったし、歌曲賞候補で授賞式も盛り上げてくれそうなので。主演男優賞は心情的にはアダム・ドライヴァーなのでハズれても後悔なし!
プロフィールさまざまな媒体にレビューやインタビュー記事を執筆する映画ライター。Yahoo!ニュース 個人も日々更新中。大好物はイギリス映画。アクション、ミュージカルが得意ジャンルです。トム・ハンクスやバンデラスの出演作も昨年のトロントで鑑賞済み。
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『1917 命をかけた伝令』 相馬学
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- 本命
- 『1917 命をかけた伝令』
- 対抗
- 『アイリッシュマン』
- 大穴
- 『パラサイト 半地下の家族』
総評全米の映画賞を追いつつ、昨年末の段階では『アイリッシュマン』で、スコセッシ戴冠再び!? と思っていた。が、ゴールデン・グローブ賞の発表以来、『1917 命をかけた伝令』に流れが来ている。全米プロデューサー組合賞、全米監督協会賞まで制したのだから、監督ともども、これはもう当確。俳優部門は比較的、順当なのでは……と予想したものの、波乱があるとすれば主演の男・女優部門か。男優賞はホアキンのヤンチャキャラが保守的なアカデミー会員の反感を買った場合、アダム・ドライヴァーの線もありそうだ。女優賞は、“白すぎるオスカー”と揶揄されかねない俳優部門の顔ぶれの中で唯一のアフリカ系アメリカ人、シンシア・エリヴォの存在が気になる。以上、思い入れを一切はさまない予想だが個人的には、初めて観たときのインパクトの大きかった『ジョーカー』を応援したい。結果も楽しみだが、MCやスピーチで大統領選に関するジョークがどれだけ飛び出すのかに注目している。
プロフィールアクション&ホラーを愛するフリーライター。「SCREEN」、「DVD&動画配信でーた」「月刊スカパー!」、劇場用パンフレットなどの紙媒体や、シネマトゥデイ、CINEMORE、otocotoなどのネット媒体でお仕事中。
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『パラサイト 半地下の家族』 高山亜紀
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- 本命
- 『パラサイト 半地下の家族』
- 対抗
- 『1917 命をかけた伝令』
- 大穴
- 『アイリッシュマン』
総評昨年の『ROMA/ローマ』を考えると、『パラサイト 半地下の家族』は監督賞、国際長編映画賞止まりかもしれないが、作品の芸術点は『1917 命をかけた伝令』が高そうだし、となると監督賞に近いのはサム・メンデスで、作品賞は『パラサイト 半地下の家族』? とはいっても、アジア・パワーの波が来てるのかと思いきや、ここにきて『フェアウェル』がスルーされて、不安。作品賞はどれが受賞しても驚かないから、悩みまくり。一方、悩まなかったのは主演の二人、ホアキン・フェニックスとレネー・ゼルウィガー。もはや演技を通り越して、彼らの存在自体がキャラクターにさらなる深みを与えていて、いまだからこそ賞にふさわしい。逆にいま逃すと次のピークはいつ来ることやら。マーゴット・ロビーは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』もいいが、『スキャンダル』のモノローグにぐっときた。『スキャンダル』はカズ・ヒロ氏の受賞にも期待。選んだ結果がやけに白すぎるのでここはひとつ、お願いします、『パラサイト 半地下の家族』!!
プロフィール女性誌を中心に執筆。「ELLE Cinema Japan」「JBpress」でおすすめ映画を紹介。「ELLE MEN」ほか、若手俳優へのインタビュー多数。現在、Netflixオリジナルシリーズのドラマ「Giri / Haji」絶賛ロス中!
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『パラサイト 半地下の家族』 中山治美
(C) 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED総評個人的には主要賞は全部『パラサイト 半地下の家族』でいいじゃん! と思うほどポン・ジュノ監督の最高傑作だと思っているのだが、なぜか俳優は誰ひとりノミネートされていない。『愛、アムール』(2012)や『アーティスト』(2011)の時はちゃんと入ってたどころか受賞までしているのに。筆者同様「なんでや?」と異議を唱えたい人やガンホ好きの票が作品賞にグッと集まるのでは? そして、国際長編映画賞とのダブル受賞を期待。主演男優賞は本来ならホアキンなのでしょうがハリウッドではいまだ遺恨を持つ人もいるだろうかと思い、ここは『スター・ウォーズ』景気に浮かれることなく作品選びに映画愛を感じるアダム・ドライヴァーへ。とくれば主演女優賞は相方役で絶妙なコンビネーションを見せたスカヨハにあげたい。助演男女はベテランが多いので、ここは新鮮味を求めてみた。それにしてもかつては全く別の趣向に思えたカンヌとアカデミー賞だったが、近年は近い存在に。長編アニメ映画賞に『失くした体』まで入っている。アカデミー会員多様化の影響か?
プロフィール1969年生まれ。映画ジャーナリスト。「GISELe」ほか、ウェブサイト「おしごとはくぶつかん情報館」で、仕事の悩みに映画で答える「おしごとシアター」を連載中。終活に向けて、これまでの旅を総括するブログ「中山治美の”世界中でかき捨てた恥を回収す”」を始めました。
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『1917 命をかけた伝令』 前田かおり
(C) 2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.総評配信系の勢いはもはや止まらない……とはいえ、前哨戦の流れを見ると、作品賞は『1917 命をかけた伝令』か、韓国パワーで席巻中の『パラサイト 半地下の家族』のどちらか。ここに、アンチ配信派推しの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が絡んで三つ巴の戦いに発展するか!? いずれにしろ、昨年以上に作品が増えても、配信系作品への風当たりはまだまだ強い。加えて、“白すぎるオスカー”とか“女性蔑視”とかさんざん言われてきたのに、今回また白人主流だし、女性監督の候補もなし。一歩進んで二歩下がるオスカーって感じ。主演男優賞、助演男優賞は決まりだと思うが、『ロケットマン』のタロン・エジャトンが入らなかったのが不満。何故!? 主演女優賞はレネーが有力で当てに行くべきでしょうが、若い女子力で人生を切り開こうとするシアーシャ・ローナンに一票。スカーレット・ヨハンソンには主演ではなく、『ジョジョ・ラビット』のたくましくチャーミングな母役で助演女優賞をぜひとも獲ってほしい。ホントに素敵で泣けちゃいます。
プロフィール「DVD&動画配信でーた」「日経エンタテインメント!」「SCREEN」などで映画、海外ドラマ記事やインタビュー執筆。韓国ドラマも好物で「韓国ドラマで学ぶ韓国の歴史」などにも寄稿。
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『アイリッシュマン』 森直人 ★惜しくも5部門的中!★
Netflix映画『アイリッシュマン』独占配信中
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- 本命
- 『アイリッシュマン』
- 対抗
- 『ジョーカー』
- 大穴
- 『パラサイト 半地下の家族』
総評再び「白すぎるオスカー」が問題視されてもいる今回ですが、「映画」と「政治」のバランス、あるいは相関については常に難しいテーマだなあと思います。最近のアカデミー賞は、もはやハリウッド業界の政治意識を表明するような感覚がメインでしょうか。『フォードvsフェラーリ』などはそれこそ「真っ白」ですが、ただこういう政治の現在とは無縁な古風な傑作も「映画」の観点からある程度認められているのだとすればうれしい。個人的に注目しているポイントはズバリ2つ。まずポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』がどこまで大暴れしてくれるか(外国語映画賞改め「国際長編映画賞」の受賞は確実でしょうが)。そしてNetflix勢力の存在感。共に昨年度における『ROMA/ローマ』が示した問題提起の延長で捉えています。それもあって作品賞と監督賞は(かなり迷ったんですが)「こうなったらいいな」という希望を込めて。主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞に関してはあまり他の選択肢が思い浮かばなかったなあと。むしろ驚愕の番狂わせを期待しています。
プロフィール「週刊文春」、「TV Bros.」などでクロスレビュー担当。「朝日新聞」、「キネマ旬報」、「MEN'S NON-NO」などでも定期的に執筆中。YouTubeチャンネル「活弁シネマ倶楽部」ではMC担当中。主に若手・新人推しの姿勢ですが、最近はベテランの凄さに圧倒されることも多し。
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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』 山縣みどり
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
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ブルーレイ&DVDセット【初回生産限定】 4,743円+税(2枚組)
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(c)2019 Visiona Romantica, Inc. All Rights Reserved.総評オリンピックで何もかもが前倒しになり、試写で全作品を網羅できないかと恐れたけれど、間に合った。いちばん悩んだのは監督賞で、アカデミー会員の好みはサム・メンデスでしょう。でもわたしはクエンティン・タランティーノが世界中に知らしめている「映画の力」を信じたい気持ち。リアリティーを追求する人から“絵空事!”とディスられても、観る人に夢と希望を与えてくれる最近のタラの仕事ぶりは評価されるべきで、脚本賞だけじゃ不足でしょう。主演男優賞のアントニオ・バンデラスは大穴狙いっぽいかもだけど、ペドロ・アルモドバルが自身を重ねた監督役は盟友バンちゃんだからこその快演。ペネロペ・クルスと同じでやはりスペイン映画で魅力が開花するのだなと思わせられた。ホアキンもいいんだけどね。主演女優賞はシャーリーズ・セロンとレネー・ゼルウィガーの一騎打ちで、一種のカムバックということでレネーに分がありそう。彼女は歌が上手いのは証明済みだけど、吹き替え? と思ったほど歌声がジュディ・ガーランドにそっくりで、その点も高評価につながるはず。
プロフィール「anan(アンアン)」や「GQ」、「25ans」、「ELLE」などで映画レビューやインタビューなどを執筆。ディズニーとFOXの合併、配信系の勢力拡大でなどで変貌する映画界の勢力地図に追いつけない状態。ガラパゴス状態の日本を置いてきぼりにしたアジア映画の進化に目を見張ってます。
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ライター9名の予想!
受賞結果は日本時間2月10日に発表!
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