GODZILLA ゴジラ (2014):映画短評
GODZILLA ゴジラ (2014)ライター9人の平均評価: 4.2
出し惜しみの美学をちょっと徹底させすぎだが(笑)。
シリーズ再始動を高らかに宣言する作品だ。ゴジラを真正面から扱うとなると避けて通れない核の問題も、一作目の意思を引き継ぎながらもその後の展開(つまりはVSものになるということだ)へのリスペクトと結びつくかたちでヒネリが加えられ、より重層性を増している。ガイア理論に基づいて、怪獣を「聖獣」あるいは「思念の集合体」として示した金子修介の「ガメラ三部作」と『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』の影響はとりわけ濃厚に感じられ、巨大生物を捉える金子流のアングルも理想的。惜しむらくはA.T-ジョンソン君ほど怪獣の出番が多くないこと。ニュース画面で1ラウンドを処理しちゃうってあんまりじゃない?
『パシリム』同様、“分かってる”監督による怪獣映画
怪獣愛やエンタメ魂は確かにローランド・エメリッヒにもあったと思うが、ギャレス・エドワーズはバックボーンである、ドラマをしっかり描ける監督である。だからこそ、冒頭の発電所事故に伴う夫婦の別れのシーンから観客の気持ちをつかみまくる。
しかも、’54年版をベースに、そしてリスペクトしながら、『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』に「平成ガメラ三部作」と、間違いなく面白かった金子修介監督作の影響も色濃い。もちろん『パシフィック・リム』同様、“敵”との戦いの状況をしっかり魅せる。もうこれは“分かってる”監督による最高級の怪獣映画といえるだろう。ただ惜しむべきは、3Dである必要がほとんどないこと!
人間社会を戒め破壊し、再生をも促す大自然の摂理としてのゴジラ
核の申し子である出自に向き合い、時代の不安をすくい取り、3.11後へ警鐘を鳴らす。国土破壊をトラウマとする日本が生んだゴジラ映画の魂を、しっかりと継承してくれた。深遠なテーマを内包しながらも、恐怖を醸成するエンターテインメントとしても抜かりない。大怪獣バトルによるスペクタクルは、戦争映画や災害パニック映画並みに凄絶を極める。完璧に描いても想像力を働かせる余地なきVFXが増える中、本作は群を抜く。もういちど怪獣の存在を信じさせ、畏敬の念さえ抱かせるのだ。善悪を超えて人間社会を戒め、再生をも促す大自然の摂理としてゴジラの存在を捉えた演出が素晴らしい。去りゆく彼の背中は観る者に多くを語るだろう。
人間が犯した罪を背負わされながらも戦うゴジラに感謝!
放射能で変異した怪獣ゴジラが人間に排除される実に不条理な『ゴジラ』誕生から60年後、ハリウッドがゴジラ像の原点回帰に挑んだことにまず好感を抱いた。もちろん原子力発電所のメルトダウンや廃墟となった街並み映像など今の日本人にとっては見るのが辛いシーンも多いが、原爆や水爆に関するアメリカ人のデリカシーの欠如は昔からだからね。特撮もデジタル化されてはいるものの、ゴジラと敵のがちんこ勝負は「何が起こってるの?」的な最近の特撮アクションと大違いで、手に汗握る迫力だ。そしてお約束の「人間って身勝手」と思わせる展開もクレバー。人類が犯した罪を背負わされ、なおかつ人類を救うゴジラに感謝しなくてはね!
米国版が放つメッセージに日本人はどう応えるべきか
1954年の水爆実験はゴジラを倒すためだった––という設定は、ドキュメンタリー映画『X年後』が指摘していたように、第五福竜丸以外への影響も甚大だっただけに複雑な思いを抱く日本人も多いだろう。だが、その怪獣が再び表れた時、人類は同じ過ちを繰り返すのか?というテーマしかり、自然の脅威や自分たちが制御出来ないモノを作りそれに振り回される人間の愚かさもまざまざと見せつけ、これは、震災も原発事故も風化しつつある日本人への痛烈なパンチである。
っていうか、本来はこうした映画を日本が発信しなきゃいけないんじゃないの?という忸怩たる思いがヒシヒシ…。ゴジラよ、日本映画界のお偉方も覚醒させてくれ。
今なぜゴジラなのかが明確な、意義あるリメイク
太平洋戦争の記憶醒めやらぬ’54年に誕生したゴジラが、当時の核兵器開発競争に対する大自然の怒りを象徴する存在だったとすれば、今回の矛先は原子力エネルギー問題に向いていると言って良いだろう。
21世紀の現代にゴジラを復活させる意味、前半の舞台が日本である意味が明確だし、東宝版を踏襲したクリーチャーデザインを含め、作り手の姿勢にオリジナルへの敬意が十二分に感じられる点が日本人として嬉しい。
スペクタクルなパニックシーンや破壊シーンも、思わず笑いがこみ上げるくらい豪快。残念なのは、宝田明のカメオ出演シーンが編集でカットされてしまったことか。DVD/BDの特典映像行きなのだろうなあ…(^^;
今度のゴジラは、見得を切る
このゴジラは、あの咆哮を放つ前に、ごく短い一拍を置く。それが歌舞伎役者が見得を切る時の、あの間合い。日本のゴジラが継承してきた、あの一拍だ。その咆哮の音色も素晴らしいが、この"間"に真髄があると見抜いたところが、ギャレス・エドワーズ監督の才能。あの愛すべき「パシフィック・リム」にすら、この間合いはなかった。
初代ゴジラの象徴としての意味、動き、音響を、きっちり踏まえている。そのうえで、彼の前作「モンスター/地球外生命体」の彼のモンスター観も盛り込んでいる。
監督の次回作は「スター・ウォーズ」のスピンオフ。彼がオリジナル作の何を継承し、新たに何を盛り込むのか。今から楽しみ。
もう立派に、めっちゃ合格だと思います!
日本において『パシフィック・リム』は受容の判断が結構割れたが、この『ゴジラ』は評価の温度差はあっても作品解釈に余りブレが起こらないのでは。第一作の原爆・水爆から、東日本大震災を受けた原発問題へ――との歴史認識が象徴するように、「オリジナルへの敬意」と「現代性」を真っ当に両立させている。
G・エドワーズ監督は腕も確かだが、「和の心」も半端ない。ヒューマニズムではなくアニミズムを基盤に、自然の脅威=「神の怒り」としてのゴジラを登場させる。対して実に西洋的なエメリッヒ版が貴重なサンプルに思えるくらい。
ゴジラが最初に顔を出す瞬間は、ポップ・アイコンとしての凄みと、ハリウッドの現在力を同時に実感!
ゴジラ映画史上もっともリアルな力作
怪獣映画にリアリティを持たせるのは困難なことだが、本作はゴジラ史上、もっともそこに接近した作品と言える。
放射能に反応するゴジラの特性と、原発事故以後の現実を結び付け、別種の怪獣を登場させることで、ゴジラの行動に説得力を持たせる緻密さ。今ゴジラが太平洋に出現したら何が原因で、どういうことが起こるかをシミュレーションしてみせる。
前作『モンスターズ』では手持ちカメラ撮影に徹して作品に現実味をあたえたギャレス・エドワーズ監督だが、今回はそれを封印してリアルな怪獣映画を撮ったのだから見事。ゴジラの立ち位置の据え方にしても、和製シリーズをきちんと追っている者のリスペクトが感じられる。