ジャッジ 裁かれる判事 (2014):映画短評
ジャッジ 裁かれる判事 (2014)ライター4人の平均評価: 4
R.デュヴァルへ敬愛の念をこめて。
D.ドブキンのコメディ・センスには一目置くが、今回はいつもといささか異なるタッチ。『アラバマ物語』あたりを想起させる法廷推理劇としても見せ場たっぷりだが、頑迷に正義にこだわりつつ晒したくない老醜を晒し出さざるを得ない身体になった父と、そんな彼に反発しながらも遅まきながら家族と折り合いをつけようとする息子のドラマこそが本筋で、ここにR.デュヴァルとR.ダウニーJr.というキャストを持ってきたのがイイ。ダウニーの過去と現在を繋げる元カノ役V.ファーミガとその娘エマ・トレンブレイ(注目!)との関係性もまた可笑しく暖かい。『ゴッドファーザー』のG.ウィリス的陰影を持ったJ.カミンスキーの撮影も流石。
ダウニーの愛すべき青二才像が活きた好編
法廷サスペンスのような邦題だが重点は人間ドラマにある。それはスリリングというより、むしろヒューマン・タッチで温かい。
ロバート・ダウニーJr.ふんする主人公が、疎遠だった父や兄弟、昔の恋人との隙間を埋めていく、そんなドラマのぬくもりに大きな魅力。設定的には笑えない状況だが、常にユーモアが宿る。コメディ畑の才人デビッド・ドブキン監督の起用が吉と出た。
ダウニーは製作総指揮を兼任しており、本作に入れ込んでいたとのこと。『アイアンマン』等で演じたヒーローの英雄的な面ではなく、自信家の青二才的な側面を上手く出しているが、それでも憎めず、むしろ好感を抱けるのが彼の強みであると再認識させられる。
人生の折り返し地点に立ってる男性諸氏は必見!
恥ずかしいほど男泣き。言わば『十二人の怒れる男』(法廷劇)と『エデンの東』(父子の愛憎)を合体させ、モラトリアム中年の自分探しという現代的な枠組みでまとめた秀作。アメリカ映画のエッセンスが詰まったD・ドブキン監督の会心作だ。
特にお薦めしたいのはR35かR40――つまり人生後半戦に差し掛かった迷える男性諸氏。ダウニーJr.扮する弁護士(やや悪徳寄り)が、ぴちぴちになったメタリカのTシャツを昔のダンボールから引っ張り出し、田舎道を自転車で突っ走るシーンだけで、もうヤバいと感じ入るはず。
アイアンマンVSキルゴア中佐というWロバートの初共演はむろん最高。そのうえ脇に控えるビリー・ボブが濃すぎ!
アイアンマンことトニー・スタークのファンも必見
ロバート・ダウニーJr.が演じている人物は、アイアンマンことトニー・スタークと基本は同じ。仕事が出来て自信家で調子のいいプレーボーイだが、その根底は悪い奴じゃない。こういう役がダウニーJr.には本当によく似合う。「アイアンマン」シリーズの大ヒットを経て、妻といっしょに設立した製作プロの第1作、彼自身が製作総指揮と主演を兼任、とくれば、今、彼が本当に演じたい役を持ってくるだろうと思われるのだが、それがトニー・スタークに似ているというのが興味深い。ヤヌス・カミンスキー撮影の静かな画面が、ダウニーJr.の表情をたっぷりと映し出す。142分という上映時間は、この"たっぷり"のため。