ディス/コネクト (2013):映画短評
ディス/コネクト (2013)ライター4人の平均評価: 4
SNSユーザー必見 危ういのはネットではなく人間の心の闇だ
SNSを起点に発生する3つの闇――癒しを求める。功名心がはやる。心を許せる相手を欲する。つながりを信じた挙げ句、彼らはネット社会特有の危険な罠に堕ちていく。テーマは単純なメディア批判ではない。過信しやすい人間の方にこそ問題の根があることも示唆する。安易なつながりがもたらす結果を、生身で接触することの重みを、考えさせる。
劇的に収斂するオムニバスという観点から『クラッシュ』や『バベル』のスタイルと比較されがちだが、構成やテクニックの妙に酔っていない。隠しキャメラやアドリブも用い、地味ながら確かな演技陣のダイナミズムに懸けている。全てのSNSユーザー必見の同時代の人間ドラマだ。
それでも人間同士の心の触れ合いを信じる
インターネットが必要不可欠となって久しい昨今、その危うい側面に警鐘を鳴らす映画は数多く作られてきたが、本作は平凡な市井の人々の群像劇という形で現代のネット社会を俯瞰して見せる。
仮想空間に現実逃避を求めた孤独な人々が巻き込まれる負の連鎖。SNSを介したイジメやフィッシング詐欺、違法ポルノなど、全てのエピソードが終盤へ向けて巧みに絡み合っていく構成は、まさにネット版「クラッシュ」だ。
安易な擬似コミュニケーションが氾濫する世の中で、それでも人間同士の確かな心の触れ合いを信じて未来に希望を託すラストがジワリと心に響く。実力のある中堅や若手を揃えた役者陣も物語に真実味を与えている。
誰かとつながるって、どういうことか考えて!
リベンジポルノに出会い系、フィッシング詐欺……、20年前には考えもしなかった新種の犯罪はインターネットの発達による弊害で、便利な道具も使い方を間違えるとトラブルの元凶の見本!? この映画はそれらの犯罪を軸に現代に置ける“人間関係”の危うさや希薄さを浮き彫りにするのが狙いで、帰結点も説得力がある。やっぱ人間同士は腹割って話し合わなきゃな、と思うしね。ただしPCが電子レンジ並みの家電となり、SNSで交流するのが当然である世代はこんなメッセージはもしやウザいだけ? SNSで培う友情に何の問題もないと言われればそれまでだし、そもそも他者とつながるってどういうことだろうとも深く考えさせられてしまった。
“SNS版『クラッシュ』”どころじゃない現代社会の闇
一言で言えば、“SNS版『クラッシュ』”だが、近年迷走しているポール・ハギスに比べ、ヘンリー=アレックス・ルビン監督はテクニックよりもエンタメ性を重視。なかでも、違法ポルノサイトで働く青年と野心溢れる女性レポーターのエピソードは特出しており、サイト経営者役のマーク・ジェイコブスのアヤしい存在感もなかなか。決してお涙頂戴の展開にもっていかないのも、さすがは『マーダーボール』の監督だ(マーク・ズパンも、車イスのドラッグディーラー役で登場!)。
『白ゆき姫殺人事件』とは違った意味でSNSの怖さが描かれている点も◎。難をいえば、“二代目『ティーンウルフ』”を始め、あまりにキャストが地味すぎる…。