ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール (2014):映画短評
ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール (2014)ライター3人の平均評価: 4
インディ・ポップの初期衝動!
S・マードックのソロ企画として、同名アルバムが09年に発表済みだが、それをイメージ・サントラとして新たにマードック初監督の映画が立ち上がった。むろん聖地グラスゴーで。これはベルセバが登場した頃の“初期衝動”が甦ったインディ・ポップの魅力全開の好編だ。
イヤーズ&イヤーズで大人気のO・アレクサンデルがアコギを握り、女優E・ブラウニングが歌う。そして踊る。ミュージカルの振りつけなどたどたどしいのだが、それが16mmフィルムのハンドメイドな質感にぴったり。『はなればなれに』の“マディソンダンス”風のシーンは、そのオマージュである『シンプルメン』をも受け継ぐもの。等身大な青春の躍動に筆者は泣いた。
“病み”や“闇”を共有できる仲間は、きっといる
心の病、ロック、ミュージカル……題材として扱うには厄介な、この3種を混ぜ合わせ、一本の映画にまとめ上げたのはスチュワート・マードックという才人だからできた技。
ファッションのセンスの良さだけで見た目を引き寄せるし、ベルセバのファンは劇中の音楽だけで満足だろう。しかし、キャラクターの内面に潜む“病み”もしくは“闇”がリアルに響くこと。そんな中で仲間を見つけた無情の喜びに、共感を抱く観客は少なくないと思う。
現代の物語だが60’sミュージカルのスタイリッシュな匂いを漂わせ、タイムレスなファンタジーのようにも見え、なおかつ心に響く。これはマードックのセンスのよさの表われ。傑作!
この眼鏡男子のたたずまいがグラスゴーっぽい
登場人物ひとりひとりの風貌、古着や帽子を使ったファッション、立ち居振る舞いはそれぞれ個性的でいて、同じ美意識で貫かれている。一種のミュージカル映画でもあって、音楽と共に登場人物たちが奇妙な振り付けで動いたりもする。その動きと、映画の色彩とリズムを貫くのも、同じ美意識。その美学は、監督・脚本を務めたベル・アンド・セバスチャンのスチュアート・マードックのもの。印象的なのは、Kitsuneレーベルのイヤーズ&イヤーズのボーカルでもあるオリー・アレクサンデルが演じる眼鏡男子。この人物の、ぼーっとしてるだけのようでいて、実はしっかり自分の立つ場所が分かってる感じが、ああグラスゴーだなあ、と思わせる。