リベンジ・マッチ (2013):映画短評
リベンジ・マッチ (2013)ライター5人の平均評価: 4
3本だと折れない矢の逸話が頭に浮かびました!?
大スターも年取ると主演を張るのが難しい。そこで数で勝負と大物が結集してファンを喜ばせるマーケットが活気づいている。『RED』効果? これは『ロッキー』vs『レイジング・ブル』がセールスポイント。2ボクシング映画の金字塔2本を貶すのかと怒る人もいそうだけど、キャラクター設定がスター本人の来歴や作品歴を反映させたりと映画ファンならニヤリとする小技も効いている。ロッキーはいつまでたってもピュアな心を持ち、ラモッタは小商いしながら無頼人生を突っ走る。しかもアラン・アーキンがトレーナー役でチャチャを入れるからたまらん。まさに3本束ねて折れない矢となったコメディ快作。肩肘張らずに楽しんでほしい。
アホらしくも、意外に(?)キッチリ人間ドラマ
卵一気飲みのロッキー・バルボアことスタローンと、引退後は漫談もやるジェイク・ラモッタことデ・ニーロ。そんなパロディを踏まえた、老ボクサーの対決はコメディ色をまといながらも泣かせる作り。
イイ歳こき過ぎの感がある老人対決は、結局のところギャグである……というコメディへの割り切りがイイ。YouTube世代の笑いのネタになるのも正しい。
それでも泣かせるのは、ふたりの歩んできた人生がしっかり見えてくるから。彼らがここまで何を背負って生きてきたのか? それが何気にきちんと描かれているからこそ、クライマックスのファイトに熱がこもるというものだ!
主演の2人以上に作り手の本気度が伝わる
予告での全身タイツ姿のスタローンとデ・ニーロには危機感を覚えたが、そこは天下のワーナーブラザーズ作品。同じ過去作などのセルフパロディ満載なジジイ・スター自虐映画いえども、エンタメ性優先の『エクスペンダブルズ』に比べ、作り手の「ネタ映画には終わらせねぇ」という本気度が伝わってくる。結果、アダム・サンドラー主演作でその実力を開花させたピーター・シーガル監督らしい、日本人好みな涙と笑いの人情ドラマに仕上がった。
引退前になかったYou Tubeや総合格闘技などが後押し、ふたたび表舞台に上がるジジイに声援を送りたくなるのは当然。エンドクレジットに登場するゲストも、ベタながらうれしいものである。
老体に鞭打つ頑固ジイさんたちのガチンコ勝負にシビレる!
まさしく「ロッキー」VS「レイジング・ブル」。若き日のスタローンとデ・ニーロの映像を加工した冒頭のフラッシュバックで、一気にテンション上がる映画ファンも少なくなかろう。
老境に差しかかった往年の人気ボクサー2人が、30年前に果たせなかったリベンジマッチへ挑む。高齢化時代の元気なお爺ちゃんたちが頑張っているというよりは、いつまでも意地を張り続ける頑固ジイさんたちが、老体に鞭打って過去の落とし前をつけるといった感じ。勿論、そこがグッとくるポイントだ。
人間いつだって人生の軌道修正は出来るという前向きなメッセージに加え、老いの現実を笑い飛ばした痛烈なユーモアも最高。実にいい気分になれる作品だ。
マジで言いますけど、感動した!!
自らの肉体とファンの記憶に刻まれたキャリア(映画史)を活かし、老人ネタで攻める。これってイーストウッドの専売特許だったはずだが、『リベンジ・マッチ』はその廉価版として一見揶揄の対象になりそうだ。
確かにラジー賞常連のスタローンが『ロッキー』をパロったり、同類のジジイ映画『ラストベガス』も控えるデ・ニーロの開き直りは賞味期限切れの大安売りに映るかもしれない。
しかし! むしろ自意識やプライドのガードを降ろしたベテランの柔らかな姿に、筆者は感動してしまった。“リスタートを切る”際の脱力から本気へのギアチェンジは、紛れもなくプロ。イーストウッドは神だが、凡人が目指せる素敵なジジイ達がここにいる!