イントゥ・ザ・ウッズ (2014):映画短評
イントゥ・ザ・ウッズ (2014)ライター5人の平均評価: 3.4
原作舞台をもっと映画的にアレンジする必要があったかも
おとぎ話の主人公たちが一堂に会した舞台ミュージカルの映画化。「マンマ・ミーア」で歌唱力は実証済みのメリル・ストリープをはじめ、豪華キャスト陣によるミュージカル演技は見事なもので、ゲスト出演的なジョニー・デップも十分に異彩を放っている。
ただ、ロブ・マーシャル監督の演出はやけに舞台臭が強いため、映像的な面白さにいま一つ事欠くのが難点。叶えた願いの代償に主人公たちが苦悩する後半などはまるで盛り上がらない。
これなら、おとぎ話をクロスオーバーさせた題材やテーマが似ていて、同じくディズニーが絡んだテレビドラマ「ワンス・アポン・ア・タイム」の方が、おとぎ話の大人向け解釈として遥かに見応えがある。
芸達者な役者の厚い層にハリウッドの底力を見た
ソンドハイム&ラパインによるブロードウェイの人気ミュージカルの映画化なので、音楽が素晴らしいのは当然。それをうたう役者の歌唱力はいかがなものか? とうがった先入観を見事に覆してくれた出演陣の実力に敬服。『ピッチ・パーフェクト』で音楽の才能を証明済みのアナ・ケンドリックや舞台系はさておき、驚いたのがクリス・パイン。味のあるうたいっぷりだし、コミカルな演技がまた上手。うたって踊れる役者の層がこんなに厚いとは、アメリカ映画界の底力、恐るべし。豪華キャストだし、セット美術も衣装もとても凝っていて、ディズニーの資金力の前にひれ伏すのみ。ミュージカル嫌いでも見る価値のある楽しい作品に仕上がっている。
端正過ぎた!?おとぎ話リミックス
誰もが知っている童話を組み合わせて、有名なキャラクターを森の中に放り込んでみる。そんなミクスチャー感が面白く、興味深く見た。
シンデレラも赤ずきんも魔女も、望みをかなえたくて右往左往し、森の中で接近遭遇しては運命が二転三転。あたふたするシチュエーションの妙が光り、大人向けの深みを感じるとともに大いにニヤニヤさせられる。
原作となった舞台ミュージカルに対するロブ・マーシャル監督らしい敬意は感じられるが、それゆえかテンポがどこかモタモタしてしまうのが残念。俳優陣が皆イイ具合にはじけている(クリス・パインの怪演に爆笑)だけに、もっと大胆に映画化してもよかったかもしれない。
ここまで芸達者な俳優を集めながら…
天下のディズニ―が、このミュージカル原作に手を出したことには驚きだが、この直後には本作にも登場する『シンデレラ』の公開が控えており、「どっちの路線もアリで何が悪い?」という開き直りっぷりがスゴい。『アナ雪』でガッカリさせたミュージカル映画としての前半のクオリティの高さに高まるが、見どころでもある思い通りにいかなくなったキャラたちが苦悩する後半のグダグダっぷりは叩かれて当然。ロブ・マーシャルの演出力にも問題があるが、このシニカルな展開はやはり演劇的であって、決して大作映画向けでなかったのだ。ここまで芸達者な俳優を集め、かなり期待度を上げさせてもらっただけに、星一つおまけ。
チャーミング王子分析の鋭さに脱帽しつつ爆笑
ミュージカルらしいミュージカル。なによりも「歌」が尊重されている。誰も彼もが朗々と歌い上げる。一つの歌が、別の歌い手によって異なるニュアンスで歌われる。複数の場面で歌われている歌が、映画の魔法で合唱になる。おとぎ話ネタなので、もっとVFX的な見せ場を作ることも可能なところを、本作はそれよりも「歌」を気持ちよく聴かせることを優先する。だから心地よい。
加えて、おとぎ話の新解釈が楽しい。ディズニーは「魔法にかけられて」でもディズニー映画の法則をギャグのネタにしたが、今回もセルフ突っ込みが満載。チャーミング王子兄弟の新解釈に、脱帽しつつ爆笑。シンデレラの決断も観客の共感を呼びそうだ。