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清須会議 (2013):映画短評

清須会議 (2013)

2013年11月9日公開 137分

清須会議
(C) 2013 フジテレビ 東宝

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.7

なかざわひでゆき

派手なチャンバラや合戦シーン抜きでも堂々たる時代劇は作れる

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 清須会議というあまり映画向きとは思えない題材をピンポイントで選んだ着眼点は面白いし、柴田勝家サイドと羽柴秀吉サイドの駆け引きと腹の探り合いを軽妙なユーモアで描いていく脚本の洒脱さも三谷幸喜作品ならではの醍醐味。滑稽なくらいの親しみやすさと冷徹な計算高さを兼ね備えた策略家・秀吉を演じる大泉洋の巧さにも舌を巻く。

 ただ、これは過去の三谷映画にも言えることだと思うのだが、細かく入り組んだ人間模様や小話の類を盛り込みすぎたせいで、2時間18分の上映時間がさらに長く感じられてしまう。総勢26名という豪華キャストも正直なところ多すぎだ。もちろん、そのこだわりが功を奏する場合もあるのだが、今回は残念ながら無駄に感じられる部分が少なくない。

 とはいえ、つかの間の平和の裏に垣間見える戦乱の世の厳しさをしっかりと描いている点はさすがだし、時代劇という新たな分野に挑戦した攻めの姿勢も評価すべきだと思う。細部までこだわり抜いたセット美術や絢爛豪華な衣装も見ごたえ十分。派手なチャンバラや合戦シーン抜きでも堂々たる時代劇は作れる。そのことを証明した意義は大きい。

この短評にはネタバレを含んでいます
中山 治美

オールスター映画の魅力と落とし穴

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

 初監督作『ラヂオの時間』(97)からわずか6作目。今や宮崎駿監督に続く日本映画界のヒットメーカーとなった三谷幸喜監督の面目躍如たる作品だ。歴史を動かした重要な会議とはいえ、映画にはなりにくい題材を豪華キャストで、かつ大規模なセットを組んで製作出来る監督はそうはいない。
 ただ基本は会議出席者である柴田勝家、羽柴秀吉ら4人の心理劇だ。これは、三谷監督の史実をもとにした舞台「国民の映画」などでも共通しているのだが、脇役により着目し、さらに自身が知り得た小ネタをこれでもか!と盛り込む傾向がある。ゆえに作品は長くなり、冗長なシーンも生む。編集で調整したくとも、著名人を起用しているためカット出来ない。また総勢26人の実力差は歴然だ。゛オールスターキャスト゛は観客を惹きつける反面、役者にとっては残酷な行為でもあるのだ。
 そんな中、安定の役所広司や小日向文世らは想定内として、特出しているのは大泉洋。人心掌握に長けた秀吉役がキャラクターに合っていることもあるが、映画『アフタースクール』や『探偵はBARにいる』など、ここ数年、濃密な仕事をこなし、実力と自信を付けた男の顔がそこにある。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

ブラックVer.大泉洋の「人たらし」処世術

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

ハンパない安定感である。日本映画のメインストリームにおいて信頼の作家ブランドを確立している三谷幸喜だが、ここまでの安全走行は監督第6作にして初めてではないか。

『THE 有頂天ホテル』から始まった美術監督・種田陽平とのタッグも、『ザ・マジックアワー』のシュールな実験などを経て、極めて平易な融合に落ち着いている。またコメディ仕立てのディスカッション劇は、初期の脚本作『12人の優しい日本人』にしろ三谷の得意ジャンルだろう。

こう書くと無難なだけの作品に思われそうだが、加えて決定的なフックがある。それは秀吉を演じる大泉洋だ。彼の起用は「なぜ、いまさら秀吉?」という疑問を吹き飛ばしてくれる。

本作の秀吉は要するにチャーミングな「人たらし」である。敵となる相手にも単に攻撃するのではなく、陽気さとサービス精神で柔らかく包み込んでしまう。そして大泉自身が、こうして芸能界をサバイバルしてきたのではないか?と、彼の処世術を重ねて想像してしまうのだ。ただし大泉が善玉だとすると、秀吉の場合は完全に腹黒い知略。同軸でくるっと裏返したキャラを得たことで、俳優・大泉洋は内在するカリスマ性を最大限に発揮した!

この短評にはネタバレを含んでいます
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