ドラフト・デイ (2014):映画短評
ドラフト・デイ (2014)ライター4人の平均評価: 3.8
肉食系人種の壮絶な駆け引きが面白い政治的ドラマ
米プロ・アメフト球団のドラフト会議の駆け引きを描いた話と聞き、政治的な内容を想像したが、これがとんでもなくエキサイティングなエンタテインメント。
ドラフト開始の12時間前から始まる物語はGMらの電話での駆け引きが激しく行き交う。おまけに、ケビン・コスナーふんする主人公のGMは家庭の問題も抱えており、落ち着く間がない。仕事とプライベートのそれぞれのドラマが噛み合ってスリルが生まれる、凝った作りに唸る。
主人公の強引な独裁者ぶりや、有望な選手が簡単にトレードされる現実など、制度の非情さが押し出している点にも緊張が宿り、ポイントは高い。アメフト描写はないが、これはワイルドな肉食系ドラマだ。
きっとあなたなら爽快感を味わえるはず!
この映画ほど自分の頭の悪さを痛感した作品はない。おそらく観客の多くが「おおお!」と驚く(のであろう)ドラマの頂点、最大のクライマックスたる「一発逆転」の意味が僕には理解できないのだ! 日本版ではそれを考慮して、本編の前にNFLドラフト制度の解説が入るが、その説明だけでは足りねぇよと感じたのだから仕方ない(笑)。戯曲家がはじめて手掛けた映画脚本らしく、人物の出入りが舞台のシチュエイション・コメディ的でやや生硬ではあるものの、ドラフト開始前どころか始まってからもなお続く他チームとの水面下の駆け引きや、時間ぎりぎりまで粘る選手たちの身上調査は面白いし、K.コスナーの悩めるGM役もぴったりなのだが…。
ドラフトから駆け引きするGMの勝負師魂に大興奮!
毎年スーパーボールを楽しみにしているアメフト好きだけれど、ドラフトには興味がなし。大金が動く出来レースとナメていたから、実態を描く本作で目からウロコがポロリ。詳細は映画を見ればわかるので省くが、とにかくGM同士の駆け引きに大興奮必至。才能を見抜く力はもちろん、各チーム状況の分析から候補者の人間性まで仔細に分析&検討し、ここ一番に賭けられる勝負師魂が欠かせない。『マネーゲーム』を見たときも思ったが、スポーツ・ビジネスの世界も実際のスポーツと同じくらいにハードなのだ。オーナー命と自身のチーム作りへのこだわりの狭間で悩むGMソニーをケビン・コスナーが好演しているが、ロマンス部分は不要だったな。
法廷ものに近いノリで楽しめるドラフト会議
快作。企画自体は『マネーボール』の成功にあやかって……くらいのもんだと思うが、意外なほど鮮やかな当たりを見せた。アメフトのドラフト会議という日本では馴染みのない題材だが、観ながらルールはある程度把握できるので大丈夫。要は司法に詳しくなくても、スリリングな駆け引きを楽しめる「法廷劇」に似た面白さがあるのだ。
最近は息子ジェイソンの手助けが多いアイヴァン・ライトマンも平易な職人芸を発揮し、監督作として『デーヴ』以来の出来。崖っぷちのGMを演じるK・コスナーの悲哀と焦燥も絶品。彼の配役は『さよならゲーム』で扮したマイナーリーグの捕手、クラッシュ・デイヴィスが製作陣の念頭にあった事は間違いなかろう。