ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション (2015):映画短評
ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション (2015)ライター7人の平均評価: 4.3
「私を捜せるわね?」には参った。
おそらく映画史に残るだろうクレイジー極まる高速チェイスと、コンサートホールにおけるヒッチコック的暗殺のクラシカルなシチュエイションが流れるように同居。スパイものというジャンルにおいても007的軟派とル・カレ的硬派が見事に合わさる、娯楽映画としてほとんど隙のない脚本にも感嘆だ。終始T.クルーズとS.ペッグとの珍道中的展開でニヤニヤさせつつ、「友情」を軸に本家帰りしたチームの結束力(だから「1」はあり得ん!)に胸が熱くなり、観てるだけで窒息しそうな水中ミッションに胸も苦しくなる。特筆すべきは初期ボンドガールの欧州的ノーブルさを「トゥーランドット」とともに纏ったレベッカ・ファーガスンの素晴らしさだ!
ようやく観ました(笑)。文句なし!
前作の熱量と方法論を引き継ぎ今回も傑作。『ゴースト・プロトコル』と本作は、ジャッキー・チェンでいえば『プロジェクトA』と『ポリス・ストーリー』くらい甲乙つけ難い。それを50代でやるトムは本当凄いよ。思えばチーム男子、全員おっさんです!
C・マッカリーの演出は『アウトロー』と同様にアクションは重めで、ギャグはオフビート寄り。それが全部ハマってる。レベッカ・ファーガソンは間違いなく歴代No.1ヒロインだろう。ちなみに導入部に出てくるヴァイナルのレア盤売ってるレコード屋――クレジットではRecord Shop Girlとあるハーマイオニー・コーフィールドが美女すぎてめっちゃ気になったんですけど!
非情な世界を生きるスパイの“情”がきらめいた快作
毎回異なるテイストで攻めるこのシリーズだけに今回も楽しみだったが、悪役はもちろん主人公イーサン・ハントもヒロインも国の後ろ盾を失い、グレーゾーンに置かれている点が面白い。いわば、はぐれ者スパイ同士の対決だ。
ド派手なアクションは言うまでもなく、チームプレイに重きが置かれている点も妙味。イーサンの仲間は3名と少数だが、それゆえ連係が緊密になりスリルも高まる。
驚いたのが、チームの面々がイーサンに対する友情をはっきり口にしたこと。諜報の世界を描いた映画に“非情”はつきものだが、このチームプレイには“情”がある。それはシリーズにおける本作の個性であるばかりか、スパイ映画の中でも独特だ。
チームワークの面白さが十分に生かされた快作
もはや、どれだけ超人的なアクションにも驚かなくなってしまった感のあるシリーズ。なにしろトム・クルーズだし(笑)。とはいえ、飛行中の軍用機のドアにぶら下がるわ、給水タンクの中にフリーダイブするわと、トム自ら命懸けのスタントに挑んだ見せ場がこれでもかと続くわけだから感嘆せざるを得まい。
さらに、チャーミングでトボけた相棒サイモン・ペッグや峰不二子的な美女レベッカ・ファーガソンとの絡みも絶妙で、チームワークの面白さが十分に効果を発揮。組織の崩壊でイーサンが追われる身になる設定は非常にありがちだが、食わせ物なCIA長官アレック・ボールドウィンを含め、ひねりの効いた展開で魅せる脚本の上手さが光る。
「トゥーランドット」にクリストファー・マッカリーの技を見た
怒濤の連続アクションの前半の見せ場のひとつは、ウィーンのオペラハウスの「トゥーランドット」の舞台裏で展開。そして、このオペラの、アラビアンナイトを原形に求婚者に三つの謎を出す美しい姫と、アリア「誰も寝てはならぬ」のイメージが、この映画のヒロインである謎の女イルサの、少しずつ明らかになっていく本当の顔に重ねられていく。この物語の組立て方に、本作の原案・脚本・監督を務めたクリストファー・マッカリーが、「ユージュアル・サスペクツ」の脚本家だったことを思い出した。彼女が三つの選択肢を口にするとき、音楽が「誰も寝てはならぬ」の旋律をそっと繰り返し、映画を見終わった後もこの旋律の余韻が残る。
練られた脚&ド派手アクションで猛暑も吹っ飛ぶ!
トム・クルーズ演じるスーパー・スパイの活躍を描く定番シリーズだが、クリストファー・マッカリー監督の脚本には驚きがぎっしり。シリーズ最高作との触れ込みは嘘じゃなく、猛暑も吹き飛ぶ痛快感だ。組織解体で孤立したイーサンが敵の実態をつかめないまま物語が進む展開がスリリングだ。主要人物の三つ巴状態がハードな心理戦となり、見る側も前のめり。シリーズを重ねる毎に派手になるアクションも秀逸で、イーサンがしがみつく軍用機が離陸する冒頭や山道のバイク・チェイスなど度肝を抜くシーンが連発。コミック担当のサイモン・ペッグはじめとする役者陣もいいが、シーン・スティーラーはアレック・ボールドウィン。巧みな腹芸に笑った。
『ワイスピ』の影響からか、まさかの路線変更
日本での『アウトロー』のヒットでゴーサインが出たシリーズ第5弾だが、時代の流れゆえ、中国企業2社が出資。とはいえ、CIA職員役でチャン・ジンチューが登場する程度で、大きな影響はなし。その一方で、オリジナルからの売りだったチームプレイのお株を『ワイルド・スピード』シリーズに取られたこともあってか、路線変更。中盤までは、サイモン・ペッグ演じるベンジーとのバディものになっており、ヒロインであるレベッカ・ファーガソンの役回りは、ほとんどボンドガールだ。いかにも『アウトロー』の監督らしく、スタイリッシュというより泥臭さが売りであり、ユーモアも満載。『コラテラル』以来となるトムの大胆なコケも拝めます。