2つ目の窓 (2014):映画短評
2つ目の窓 (2014)ライター3人の平均評価: 3.7
そもそもタイトルの意味が判らない。
沖縄や奄美を舞台にして、“癒し”とか“いのちの繋がり”を描く映画はあまりに安易に思えて仕方ないが本作も然り。かつての『萌の朱雀』のように説明台詞を削った結果、物語がほぼ判らない(というか資料に記された「あらすじ」が画面から読み取れず愕然)ということはないが、本作は逆に重要な物事がすべて台詞として語られ、それに引っ張られるかたちで主人公たる若い恋人ふたりが行動するので、思春期映画としてのリアリティが稀薄すぎ。母の死後も自分を通して命が続くと気付き、通夜にセックスを迫るヒロインも極端だが、“淫乱”な母への嫌悪感から彼女を受け入れられない16歳男子、というのもいかにも頭だけでできあがったお話だ。
見る者の魂を浄化してくれるような傑作
奄美大島の豊かな自然と大らかな民俗信仰を背景に、思春期の少年と少女の成長を瑞々しく描いていく。
この世の生も死もありのままに受け入れ、我々もまた森羅万象の一部に過ぎないことを知る。そして“神”のごとき雄大な自然に比して、人間がいかに儚い存在であるかを理解すれば、その美しさを愛し醜さを赦すことができるだろう。これは、まるで魂を浄化するような映画体験だ。
河瀬監督の逞しくも繊細な演出と幻想的なカメラワーク、そして物語の世界に完全に溶け込んだ役者陣の演技、どれも見事で素晴らしい。中でも、ユタである母親・松田美由紀と主人公2人を見守る老人・常田富士男の佇まいには神がかり的なものすら感じる。
色眼鏡を外して、まっすぐ見て欲しい青春映画
河瀬直美監督の日本における不幸は国際的な評価が高すぎる、カンヌ・エリート的なイメージにあるのではないか。そんな“曇り”を取り払って本作と向き合うと青春劇のみずみずしさが迫ってくる。
男の子と女の子がそれぞれの壁を乗り越えて結ばれる。どこにでもある物語を、心の一歩一歩の動きを丹念にとらえて説得力をあたえ、大自然の描写とともに神話的なレベルに高める。そんな力技に唸った。
“代々つながってゆく命”という河瀬監督らしい太いテーマは見れば理解できるが、“曇り”になりかねないそれはあくまで後からついてくるもの。まずはドン詰まりから逃れようともがく若者たちをとらえた、みずみずしさに注目して欲しい。