NY心霊捜査官 (2014):映画短評
NY心霊捜査官 (2014)ライター3人の平均評価: 4
ほとんど無理矢理なドアーズが絶妙の効果!
昨今流行りのエクソシストものだが、その嚆矢となる『エミリー・ローズ』のS.デリクソン作品。発端はアフガンの砂漠(POVが活きている)、その非情で乾いた戦場と無秩序で湿気に満ちたブロンクスとを対比するところから始まる物語は、直截的にこのジャンルの里程標『エクソシスト』を想起させる。『ハルク』(偏愛するアン・リー版の)や『ミュンヘン』など運命に弄ばれる役柄が似合うE.バナが未来予測という神の恩寵を得た故に悪魔の標的となる刑事を演じてぴったりだが、もとジャンキーの神父というなかなかパンクなキャラの相棒がまたイイ。エクソシズムの儀式の過程を、これほどエンタテインしてみせるのも、ひとつの達成だ。
人間ってのは奇妙な生き物、だから怖い!
スコット・デリクソン監督作らしい堅実さでつづられるオカルト奇譚。悪霊らしきものは登場するが、それを奇抜に思わせない自然体の語り口がサエる。
巧いのはエリック・バナふんする心霊捜査官の描き方。つねにダークな影を背負い、捜査を進めるうちに正気を失ったり、取り戻したりの危うさがいい。そんな緊張感がベースとなり、超常現象の奇抜さを中和している。
エドガー・ラミレスふんする神父も妙味だが、その容姿は聖職者には程遠く、全編に曲がフィーチャーされるザ・ドアーズのボーカリスト、故ジム・モリソンの晩年期に似て異様な雰囲気。“People Are Strange”――それが本作の恐怖の素と言えよう。
監督の次回作はマーベルの「ドクター・ストレンジ」だ
夜の暗さが濃い。湿っている。それでいて手触りは粗くざらついている。そんなブロンクスの夜が、背後に何かよくないものを隠している気配が、スクリーンから匂ってくる。こういう類の夜の愛好家なら必見の1本。夜の動物園で何かが行われている。夜の地下室の隅に何かがある。正体は分からない何か嫌な感じが、静かに忍び寄ってくる。
この物語にドアーズの歌詞と曲を盛り込んだのは、監督スコット・デリクソンのアイデアとのこと。彼は子供の頃からドアーズが大好きだそうで、なるほどドアーズの世界はこの監督の「エミリー・ローズ」「フッテージ」、そして本作の夜に通じている気がする。