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メビウス (2013):映画短評

メビウス (2013)

2014年12月6日公開 83分

メビウス
(C) 2013 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.8

ミルクマン斉藤

ネジレに捻じれて性のお笑い地獄へ。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

『魚と寝る女』や『受取人不明』あたりの、むやみに不穏で、やたらと描写が“痛い”キム・ギドクが戻ってきた感。男の「性」…いや「生」はすべからく男根で左右されているのだといわんばかりの、潔いまでの男根への執着が可笑しい。アレを失ったら失ったで、石で足の甲を摩擦したり、果ては肩にナイフ突き立てぐりぐりしてエクスタシー…とか、ここまでくると業の深さも愛しくなる。夫と息子、ふたりの人生を狂わせるふたりの女を同じ女優が演じるというのもまさにメビウスの輪じみた倒錯だが、時に女性に対し異様なまでにサディスティックな目を向けるギドクらしく、カエルのように大股開いての転ばせっぷりがなんとも偽悪的。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

股間から始まる思索のドラマ

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 男の下半身を題材にした映画は往々にしておかしさと悲しさを内包している。鬼才キム・ギドクの新作は、その限界を押し広げるかのようで興味深く見た。

 母に性器を切り取られた息子と、その責任を感じて自分もチョン切った父の物語。それは性器以外から快楽を得ることを模索するという予期せぬ方向へ転がり、滑稽さや、これと背中合わせの悲しさを醸し出す。

 むろんギドク作品だから一筋縄ではいかず、最後には宗教的、思索的なテイストへと帰結。そこに何を見るかは、ひとひとりに委ねられるが、とにもかくにも目の離せない映画であることに違いはない。一男性客として内股になりながら引き寄せられた。

この短評にはネタバレを含んでいます
中山 治美

炸裂するギドク節に、あなたは付いて来られるか!?

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

 キム・ギドク映画の基本は愛憎劇だ。ただ、それを表現する振り幅が弱冠常軌を逸しており、遂にここまで来たか!の印象だ。乾ききった人間関係を打破すべく、ダイレクトに性器へ手が伸びる。この設定を痴態と捉えるか、人間の本質を突いていると見るかで評価は分かれるだろう。しかし言葉よりも、性器を愛でたり傷つけたりすることで登場人物の激情すべてを表現し、物語を展開させてしまう卓越した映像センスはさすがだ。
 悪童も気付けば今年で54歳。この執拗な性への興味が創造の原動力になっているのは間違いない。巨匠・今村昌平は言った。「すべてはち○ぽが硬いうち」と。真理である。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

笑って、泣いて、叫ぶ、ガッチャンコ親子

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

セリフ一切なし。笑う・泣く・叫ぶ、3つの感情表現だけで描かれるのは、下半身を切ったり、貼ったり、“ガッチャンコ”親子による戦慄のホームドラマだ。異常なまでの緊張感が持続するなか、男には痛すぎるショッキングシーンと、吹き出してしまうほどのブラックユーモアのさじ加減の巧さも、『ニンフォマニアック』どころじゃない。
そして、なにより主人公の妻と愛人を完璧に演じ分けたイ・ウヌの女優魂には圧倒させられる(『さよなら歌舞伎町』では、また別の顔を披露!)。『春夏秋冬そして春』と通じる無限ループがテーマながら、さらに一皮剥けたキム・ギドクの哲学。ついに、ここまで来たか、と感じさせられる83分である。

この短評にはネタバレを含んでいます
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