Zアイランド (2015):映画短評
Zアイランド (2015)ライター5人の平均評価: 3.6
職人技とパワーで見せる和製ゾンビ映画の快作
ようやく真っ当な和製ゾンビ映画が出てきてくれたという印象だ。ワイヤーワークを取り入れたアクションもキレがいいし、ヤクザ物とのジャンルミックスにもソツがない。主要キャストだけで15人を超える群像劇も破綻することなくまとめられており、品川ヒロシ監督の巧みな職人技が光る。
お笑い芸人ならではのしゃべくり漫才的なセリフの応酬は時として過剰に感じられるし、随所に散りばめられたゾンビ映画ウンチクは「サンブンノイチ」の名作映画オマージュ並に底が浅いものの、それもまたご愛嬌と許せてしまうだけの勢いは十分にある。ヤクザとゾンビ、それぞれの悲哀をきっちり盛り込んでいる辺りも芸が細かい。
"ゾンビ映画あるある"ネタに思わず爆笑
女好きの青年医師が、意外なことにゾンビ映画オタクで、ゾンビが襲ってきてるというのに、「スクリーム」のランディのように、"ゾンビ映画あるある"を解説せずにはいられないところがウケてしまった。そんな"あるある"満載のゾンビ映画でありつつ、ちゃんと、ヤクザ映画で、個性的すぎる登場人物ばかりの群像劇が楽しめる。
だが、品川ヒロシ監督映画の真髄は、リズム。この監督の"しゃべり"に"しゃべり"を掛け合わせて映画のリズムを作る技は、さらに磨きがかかり、会話でリズムが生めないときはカメラのカット割りでリズムを生み出す。お笑い芸人やミュージシャンを多数起用、その存在感とリズムで映画を躍動させている。
確かな熱は感じるが、ギャグは冷や水的!?
熱のこもったエンタメ映画を撮れる監督として品川ヒロシには注目していたが、哀川翔をスターとしてバリッと撮れる才腕は見事。稀有な個性を持つこの俳優をゾンビと噛み合わせるアイデアからして面白い。
ゾンビの恐ろしさとおかしさのバランスや少女アクションの色気を効かせつつ、負け犬である主人公をヒーローに高める、映画的温度の上昇。エンタメのツボを心得たニクい作りだ。
ただし前半、主人公が登場しないシーンでの“狙った”感だけが先立つセリフの応酬は鼻に突く。TV的な言葉だけのギャグは、スクリーンで見るには少々キツい。テレビ慣れした観客には気にならないだろうが、映画ファンとしては不満が残る。
ここまでやってくれたら、評価せずにはいられない!
『サンブンノイチ』で「今度はアクション映画を!」と思わせた品川監督だが、しっかりアクションを魅せるゾンビ映画という、ガチなジャンルムービーを撮った。Vシネ・オマージュから始まり、エログロバイオレンス描写満載のB級テイストは、あくまでも監督の狙い。予算も時間も費やされているのが一目瞭然で、これまでの国産ゾンビ映画と一線を画すクオリティの高さを証明。風間俊介演じるゾンビ映画マニアの医師などの各キャラも生き生きしており、哀川翔主演作としても『25NIJYU-GO』で感じたモヤモヤを吹き飛ばしてくれる。ただ、物語の発端となる組長の愛娘の顛末に関しては、手抜きじゃないかと思えるぐらい残念すぎる。
もはや品川ヒロシは「優秀な職人」監督である
監督:品川ヒロシの実力はこの4本目で最も判り易く認知されるのではないか。ある意味、日本の映画人にとって鬼門といえるゾンビ映画に挑みながら、これだけポップなエンタメに仕上げたのは画期的。グロを抑えた西村映造の仕事も絶妙。
狙いは日本版『ゾンビランド』とのことだが、『バタリアン』『ドーン・オブ・ザ・デッド』『ワールド・ウォーZ』などロメロ原理主義とは異なる「批評・変換」意識が脈打つ。言わばニュースクール派の快作なのだ。
同時に「哀川翔30周年記念映画」の文脈をきっちり押さえているのも◎。哀川が三池崇史と組んで放った特殊Vシネマをアップデートしたような。水野絵梨奈&山本舞香の最強JKにも拍手!