悪童日記 (2013):映画短評
悪童日記 (2013)ライター2人の平均評価: 4.5
ホラーのトーンを徹底した堂々たる力作
傑作と呼ばれる小説を映画化することは、比較される以上リスクも大きいが、これは鮮烈なビジュアル化。緊張が高いレベルで持続する逸品となった。
思いやりとは無縁の太った祖母の虐待、小児性愛の匂いを漂わせたドイツ将校との遭遇、そしてそれらを吸収して生き抜く術を学ぶ子どもたち。邪気が宿り、研ぎ澄まされていく彼らの姿はある種のモンスターにも思える。
子どもが自力で戦時下を生き延びるのはヘビーなことであり、彼らの姿をとおして反戦が訴えられてはいるが、一方でこれは堂々たるホラー映画でもある。観客をその線上に置くことが本作の妙味と言えよう。
戦時下だからむき出される人間の暗部にゾゾゾ〜ッ
第二次大戦中、東欧(と思われる)の田舎町に疎開した双子の視線を通して暴き出される人間の暗部が実に恐ろしい。幼い子供を容赦なく叩きのめし、他人に濡れ衣を着せ、お互いにだましあい……。戦火の下だからこそむき出しになる暴力や欺瞞、搾取、差別意識などに触れた双子が「強くありたい」と自虐的な鍛錬を繰り返す発想は実に独特で、ときに眉をひそめる行為もするあたりが生々しい。ただ陰惨な状況に流されることなく、両親が教えてくれた規範に従う姿には純粋さゆえの強さも感じる。映画を支えたのは力強いまなざしを持ったジェーマント兄弟で、以心伝心な演技は双子ならでは? ぜひ、この双子で3部作を完成させてほしい。