龍三と七人の子分たち (2014):映画短評
龍三と七人の子分たち (2014)ライター4人の平均評価: 3.5
たけしにバス、とくれば「お笑いウルトラクイズ」ですな
イッツ・ア・ジジイ・パーティー! しかも日活育ち(藤竜也、中尾彬、小野寺昭)が多いからか、遊戯者が集うかつての日活ニューアクションの匂いを嗅いだ。といっても北野武はそんな映画史など意識するわけはなく、飲み込みやすいものを求める時流への「これでもくらえ!」的開き直りと、笑いのプロとしての矜持をアンバランスに共存させているのだが。
フルスロットルでハッちゃけた挙句、最終的に何の反省もしていないジジイたち。そこが北野映画的。ただし、敵の若造どもはもっと凶暴でもよかった。その昔出したCD『Carnaval -饗宴』の惹句は「職業=ダンディ」。いつでも要求に応えきる藤竜也の“懐の深さ”に乾杯だ。
たけしコメディで笑ったことなくても大丈夫。
アチャラカであれメタであれ、ほとんど露悪的なまでに「笑えなくてあたりまえ」な北野武のコメディとしては初めてフツーに笑える映画。最初から延々と続く藤竜也と近藤正臣のジイさん漫才はじめ、「もしジイさんたちがナチュラル・ボーン・ヤクザだったら」というお題のコントの集合体。中尾彬のあまりに無体な扱い以外、プロットそのものも目新しくはないし、オチのキレも総じてユルいのだが、名うての老優たちが(頑張ってるのか天然なのかよく判らないけれど)バカ演じてる微笑ましさがけっこうツボにハマる。場外市場カー・チェイスでの壊しっぷりはなかなかのものだが、緊迫感を一切煽らず妙にのんびりした鈴木慶一の音楽がまたいいのだ。
やりたい放題のジイさまたちが現代日本の閉塞感をぶち破る!?
要は、昔気質の老人ヤクザVS新興犯罪組織の大喧嘩だ。そこに高齢者ならではの悲哀を込めたナンセンスギャグを散りばめることで、現代日本のモヤモヤとした閉塞感を笑い飛ばす痛快なアクション・コメディとして仕上げている。
ギャグの基本は「オレたちひょうきん族」のコント。その点で好き嫌いは分かれるかもしれないが、お笑い芸人ビートたけしの映画として見れば十分にアリだ。実際、どのジイさんにもたけしの影がチラホラと見え隠れするしね。
近頃の若いもんは…という年寄りのボヤキをそのまんま映画にしてしまったような作品。よく考えれば目クソ鼻クソなのだが、そのしょうもなさを含めたジイさんたちの天衣無縫が愛らしい。
イジリ倒されるジジイがクセになる
これまで狙ったようにハズしてきた北野監督のコメディ路線だが、『アウトレイジ』の残り香や芸達者な俳優の好演もあって、いちばん笑える作品となった。ツービート全盛時のスピード感ある笑いとは言いがたいが、後期「ひょうきん族」のユルいコントノリとジジイ&ヤクザをイジリ倒すネタの相性の良さがクセになる。女装姿のまま路地を歩く藤竜也の姿は、『バードマン』のマイケル“パン1”キートンと重なるが、あえて『RED』のように、ジジイをヒーローに祭り上げない視点もいい。しかも、『ヒーロー・ネバー・ダイ』のラウ・チンワンと化す中尾彬といい、どんどん北野監督をリスペクトするジョニー・トー化しているのは気になるところだ。