ジェームス・ブラウン ~最高の魂(ソウル)を持つ男~ (2014):映画短評
ジェームス・ブラウン ~最高の魂(ソウル)を持つ男~ (2014)ライター4人の平均評価: 3.8
ムチャクチャさも描いて、JB好きも納得。
邦題に反して“最高の魂”なのかどうか疑問を挟む余地ありありだが、それでも偉大なのがJB。「セックス・マシーン」の誰もが知ってる掛け合いのうち、「ゲラッパ!」じゃなくて「ゲルウレッ」のほうを原題としていることからみても、彼の“相棒”(というか滅茶苦茶恩人なのだが、そこは音楽的才能が段違いだったので逆転しちまう)ボビー・バードとの関係性を主軸とし、いささか恣意的ではあるにせよ、評伝としてただの称揚的内容になっていないのがイイ。プロデューサーであり“出演”もしているM.ジャガーのこだわりだろうか、後のPファンク大魔王ブーツィー・コリンズ参加の瞬間までも一応描いてるのがファン心理をくすぐるんだな。
闘士にして天才、そして変人としてのJB
熱烈なファンとしてジェームズ・ブラウン(以下JB)は、とてつもない情熱の人で、とてつもない変人だった……と解釈している。そんな要素がバランスよく詰まった伝記ドラマ。
安直な感動作に仕立てる気は微塵もなく、ショットガン乱射~パトカーとチェイス、ベトナム慰問コンサートで興奮、スタジオで独裁等々、俺様汁が噴出するエピソードを年代にとらわれずに羅列。その結果、JBが何を得て何を失ったのかに焦点を当てており、興味深く見た。
JB役のチャドゥィック・ボーズマンは、顔は似ていないが声の特徴をよくつかんでいる。何より、天才ダンサーでもあったJBを完璧にコピーしていることに仰天。役者の凄みを感じた。
映画の中央にJBの歌とパフォーマンスがある
音楽をたっぷり聴かせてくれるのがいい。彼の歌いっぷりとパフォーマンスをたっぷり見せてくれるのがいい。アーティストはやはり私生活ではなく、その作品の中にこそ、真髄がある。映画の中心に歌唱を置き、その周囲に、日常生活でのエピソードを順不同に配置する。この構成に納得だ。
主演のチャドウィック・ボーズマンが「キャプテン・アメリカ」第3作で扮するスーパーヒーロー、ブラック・パンサーには、本作で演じた難点は多いが憎めない"ファンクの帝王"ジェームス・ブラウンと、「42~世界を変えた男~」で演じた史上初の黒人メジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソンのイメージが、きっと重ねられている。
ソウル・パワーを生んだ人間、歴史、物語
主演にミュージシャンを起用した『JIMI:栄光への軌跡』が「音楽」のコアに肉迫したものだとすれば、プロ俳優がJBに扮するこちらは「人生」寄りのアプローチ。C・ボーズマンが破天荒キャラを快演し、オリジナル音源に合わせて踊りまくる高度な芸で魅了する。
監督のT・テイラーはストレートな人間ドラマとして、貧困から成り上がったタフなアフリカ系米国人の人生を語る。『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』と併せれば、公民権運動を軸とする共通の歴史意識が見えてくるはずだ。
D・エイクロイドの出演も涙だが、音楽ファン的にはJB妻役のジル・スコットや『The T.A.M.I. Show』でのストーンズ等をチェック!