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悪党に粛清を (2014):映画短評

悪党に粛清を (2014)

2015年6月27日公開 93分

悪党に粛清を
(C) 2014 Zentropa Entertainments33 ApS, Denmark, Black Creek Films Limited, United Kingdom & Spier Productions (PTY), Limited, South Africa

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

ミルクマン斉藤

音楽はあからさまにモリコーネ・リスペクト!

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

悪いことしか起こらないムードぷんぷんな幕開きからド直球。「フォードとレオーネと黒澤の信者」というレヴリングに、一風変わった娯楽作が絶品なA.T.イェンセンの監督・脚本とあってデンマーク色は皆無の正統派復讐ウェスタン…ではあるが、資本主義と結託する利己的な町長(J.プライス!)、先住民を殺しすぎて心が荒んだ元騎兵隊、先住民に舌を切られた無法者の妻 (E.グリーンが目ヂカラで人生を呪う女を好演)…と、どのキャラもアメリカの原罪を背負ったよう。もはや名優M.ミケルセン扮する元デンマーク兵士の真面目な移民が、哀しみを湛えた反権力のアウトローへと変貌するのもその例外ではないのだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

黒澤映画からの影響も濃厚なバイオレンス西部劇

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 最愛の家族を惨殺された移民の男が、小さな町を暴力で牛耳る無法者一味に壮絶な復讐を遂げる。珍しいデンマーク産西部劇だ。
 砂埃にまみれた大西部の荒涼とした世界を背景に展開するハードなバイオレンス。権力の利己主義と弱者の事なかれ主義が悪党をのさばらし、やがて巨大な資本主義の波が米国の開拓精神を容赦なく呑み込んでいく。ある意味、現代社会のルーツを19世紀アメリカに垣間見る作品と言えよう。
 マカロニウエスタンをお手本にしていることは明白だが、それ以上に濃厚なのは黒澤明からの影響。中でも『用心棒』を彷彿とさせるシーンが多い。マッツ・ミケルセンの寡黙なダンディズムとエヴァ・グリーンの怪女優ぶりも光る。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

デジャヴ感はあるけど、オペラ的な復讐劇に胸躍ります

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

『狼よさらば』と『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』に『大砂塵』をまぶした感じのB級映画だが、開拓時代の西部はこんな感じだっただろうと思わせる設定が素晴らしい。マッツ演じる主人公は食いっ逸れたデンマーク軍人(だから射撃が上手)だし、町を仕切る男が元騎兵隊員で、町長は「事が起きれば儲かる」的な兼業棺桶屋。誰もが命と金に固執するあたりが生々しい。モラル無き開拓地ゆえの犯罪を血で償わせれば復讐合戦となるのは一目瞭然だが、それでも怒りをぶちまけるマッツの冷徹な瞳にしびれる。最近、何を演じても威風堂々として見えるのは自信MAXだから? スタイリッシュな撮影も復讐スパイラルをオペラチックに見せる効果大。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

北欧でも西部劇の快作が生まれる、喜ばしい誤算

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 デンマーク製の西部劇に、まず“?”となったが見て納得。北欧からの移民の話であり、アメリカが移民によって成立したという歴史がそこにある。

 そんな現実を踏まえつつ、物語はキャラクターの感情にフォーカスし、血で血を洗う報復合戦へとドラマを展開させる。そこには無駄がない。だから緩みもない。ハードボイルドな西部劇とも言える硬派なタッチに惚れた。

 90分ちょっとのサイズにまとめたレヴリング監督のソリッドな演出も、寡黙な主人公にふんしたミケルセンの滋味演技もイイ。が、何よりセリフのまったくないスカーフェイスのヒロイン、エヴァ・グリーンの絵的インパクトに圧倒される。快作!

この短評にはネタバレを含んでいます
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