東京無国籍少女 (2015):映画短評
東京無国籍少女 (2015)ライター2人の平均評価: 3.5
押井守の好きなものが、全部詰まってる。
押井守の好きなものが、全部詰まってる。ボブカットの鋭い目の少女、巨大な銃器、戦闘ヘリコプター、戦車、モーツァルト。そして、クライマックスに爆発する、身体を駆使した格闘アクションが、見事に決まる。ストーリーに仕掛けられたギミックも、何度もヒントが提示されて、きれいに着地する。さらにタイトル通り、押井守にとって少女とはこういうものであるという、この監督流の少女論にもなっている。現時点ではこの監督のアニメ作品のほうにより魅了されてしまうが、この監督が次に実写映画で何をやるのか、これからも注目していきたくなる。
“超越”のロマンをバイオレントに突き詰める
今いる自分とは別の何者かに進化する可能性。『第9地区』等のニール・ブロムカンプ作品にも通じる“超越”にロマンを感じるならば、本作も存分に楽しめる。
押井作品では“超越”がしばし大きなテーマとなっていたが、本作もこの系譜に連なる。PTSDを患い、内面的に追い込まれるヒロインの心情をスリリングに描きつつも、ステップオーバーの快感、そこから続く戦いの未来というエピソードがアドレナリンをかきたてる。
驚いたのは押井作品にしては過激なスプラッター描写。清潔で真白な美術室が鮮血にまみれる恐怖と興奮。好き・嫌いはあるだろうが、この苛烈なビジュアルは押井監督自身の“超越”と言えよう。