スーサイド・スクワッド (2016):映画短評
スーサイド・スクワッド (2016)ライター5人の平均評価: 3.2
DCユニバースは、ここから突き抜ける、か!?
悪党と呼ぶには“悪”の部分が弱かったり、キャラが多いせいかイマイチ個性が出ていない者がいたりと細かな不満はあるのは、期待値が高かったからか。それでも女性キャラたちの奮闘ぶりが印象的で十分に楽しめた。
核となるのはもちろんハーレイ・クインで、ルックスといい、理屈の通用しない習性といい、悪の魅力が誰より弾けていて吸引力は抜群。カタナやエンチャントレスといったキャラも出番は少ないが、印象度は高い。
何より歓迎したいのは、DCエクステンデッド・ユニバースの方向転換。『ダークナイト』の成功以後、必要以上にダークなトーンに徹していたDC作品の流れの中で、本作の“ヌケ”の良い痛快さは魅力的である。
DCコミック版「特攻大作戦」はワルの魅力がイマイチ足りず
興行成績はさておき、本国の批評は空前の大ブーイング。それも分からんではない。脚本は行き当たりばったりだし、登場人物の扱いは雑だし、後半の展開はまるで「ゴーストバスターズ」だし。そもそもの基本プロットが「特攻大作戦」。しかも、奴らの方がよっぽど本格的なワルだった。
ただ、何を隠そう政府の役人が一番血も涙もない極悪人です!ってとこは気に入った。もちろん、ハーレイ・クインのクレイジーでパンクなキャラも魅力的。よくよく考えれば、30年くらい前からニナ・ハーゲンがほぼ同じ格好してたよなあとは思うものの、まあ、あちらは畑が違うからいいでしょう。脳みそ空っぽにして楽しむ分には問題なし!
今も気になるGQのその後。誰か教えて!
死刑マストな極悪人どもを束にして世界を脅かす敵と戦わせる発想はまさに『シルミド』。でもアメコミなので刹那的な瞬間は一切なく、とにかくドンパチとハーレイ・クインのクレイジーっぷりに終始する。それと全身から強面オーラを発散するヴィオラ・デイビスの存在感でお腹いっぱい。豪華キャストの群像ドラマゆえにどのキャストに思い入れするかで面白さが違ってくるわけで、公開前からがんがん映像が出ていたジョーカーことジャレッド・レトの活躍を期待してたら肩すかしを食いました。ぎゃふん。気を取り直してスコット・イーストウッドに集中したら、再びぎゃふん。映画を楽しむのも自己責任と思い知りました。
ハーレイ・クインにシビレっぱなし
ハーレイ・クインにヤラレる。映画はたまに、作品としてどうかということとは関係なく、そこに登場したキャラクターの強烈さで圧倒してくれることがある。例えば「ダークナイト」のジョーカーがそうだったが、本作のハーレイ・クインもそれ。凶悪なのに、キュート。壊れているのに、明晰。ブリッコなのに、下品じゃない。さまざまな相反する要素が、絶妙な配分で融合されていて、これ以外の配分は考えられない。コミック「マッドラブ」の彼女でお馴染みの道化師の衣装がチラッと登場するという、サービスも楽しい。予告編を見て彼女に対する期待値がかなり上がった状態で見ても、しっかりその期待に応えてくれる。
ハーレイ・クイン観るだけなら、問題ないッ!
冒頭から、やたら歯切れの悪い演出と、破綻した脚本。ピンポイントで登場するジャレッド・レトのジョーカーや、くねくねしてるだけのカーラ・デルヴィーニュのエンチャントレスなど、これだけ面白いキャストを集めながら、全然生かしてない残念感。でも、そこがいかにもデヴィッド・エアー作品っぽくもあり、得意なミリタリー・アクションは恐ろしく気合が入っている。ただ、あえてR指定を避けたことで、独特のヴァイオレンス美学も生かせず、改めて『デッドプール』のスゴさを実感させられる結果になってしまった。ただ、いちばんの売りであるハーレイ・クイン(もしくはマーゴット・ロビー)を観るだけなら、まったく問題ないッス!