エリザベス 神なき遺伝子 (2014):映画短評
エリザベス 神なき遺伝子 (2014)ライター2人の平均評価: 3
クローネンバーグ作品を彷彿とさせるアート系SFサスペンス
クローン人間を誕生させた科学者の苦悩と葛藤、そしてその代償とも言うべき呪われた“失敗作”の反逆を描く。
と同時に、科学の進歩に対する人々の不安や疑心暗鬼、未知への恐怖から理性を失い暴走する大衆心理の怖さを織り交ぜながら、テクノロジーとモラルの境界線を模索する。肯定派と否定派の双方に疑問を投げかけるバランス感覚は悪くない。
なんとなくデヴィッド・クローネンバーグの『ザ・ブルード』を彷彿とさせつつも、基本的にはアート志向の強い低予算インディーズ映画。あらすじから連想されるようなホラー要素はかなり薄い。そこが好き嫌いの分かれ目になるだろう。
現代のフランケンシュタイン物語に隠し味あり
初のクローン人間を誕生させた科学者である主人公の名前は、フランケンシュタインの怪物を生み出した博士と同じ、ヴィクター。遺伝子操作を踏まえた現代のフランケンシュタイン物語が、生み出されてしまったものの意識ではなく、それを生み出した創造者の心理と、その事態をめぐる周囲の反応に焦点を当てて描かれていく。そして、そのメインストーリーとは別に、"人間の子供の形をした異形のもの"の系譜に連なる物語でもあり、「ザ・ブルード/怒りのメタファー」「赤い影」をほのかに連想させもする。こうして、定番ホラーモチーフと、現代社会の抱える問題が、違和感なく共存する物語になっている。