LISTEN リッスン (2016):映画短評
LISTEN リッスン (2016)音のない世界に響き渡る音楽という未知の体験
耳の聞こえない人々、つまりろう者にとっての音楽を映像に記録した異色のドキュメンタリーである。
ある種のミュージカルでもあるわけだが、しかし当然のことながら全編に渡って音はない。楽器や音声を一切使わず、演者たちの全身を使ったパフォーマンスのみで奏でられる視覚的な音楽。普段から聴覚的な音楽に慣れ親しんでいる筆者としては、初めのうちこそ少なからぬ戸惑いを覚えた。
しかし、やがておぼろげながらも彼らが表現するメロディのようなものが見えてくる。溢れ出る感情がまるで歌声のように感覚として響き渡ってくる。それは既成概念の音楽とはまた違う新たな芸術表現だ。筆者にとっても初めての体験である。
この短評にはネタバレを含んでいます