砂上の法廷 (2016):映画短評
砂上の法廷 (2016)ライター3人の平均評価: 3
法廷劇としては十分に面白いのだけれど
リッチな大物弁護士が殺され、警察は17歳の息子を容疑者として逮捕。友人の弁護士キアヌ・リーヴスが弁護を担当するものの、肝心の被告人が頑なに沈黙を守るため裁判は難航する。
主人公を含めた関係者の誰もが嘘をつき秘密を抱える中、次々と意外な方向へと転がっていくストーリー展開は巧み。監督はテレビ「LAW & ORDER: 性犯罪特捜班」の演出経験もあり、法廷劇の描写はツボを心得ている。ノワール的な雰囲気も悪くない。
ただ、配役については少なからず疑問が残る。特にキアヌ演じる主人公は結構グレーゾーンなキャラクターゆえ、当初予定されていたダニエル・クレイグの方がはまり役だったのではないかと思う。
肝心な点はじめ、いろいろリアリティに欠けてますな!?
友人の弁護士が殺害された事件で、逮捕された彼の息子の弁護を引き受けた弁護士ラムゼイの独白で始まる法廷サスペンスで、二転三転する構成もかなり面白い。ただキャスティングがダメだ。キアヌ・リーブス演じるラムゼイが惹かれている友人の妻ロレッタが魅力ゼロ。二人の関係がすごく重要なのに、愛のかけらも感じられないって……。最初は「この地味な女優は誰?」と思い、途中でレニー・ゼルヴィガーと気づいて呆然。彼の助手を演じる新米弁護士を演じるググ・ンバータ=ローが美しく、普通の男なら彼女と恋するでしょう。リアリティが無さ過ぎる。さらに言うと、ネタばれ感たっぷりなエンディングもチープな感じ。
この法廷では全員が嘘をつく
設定が異色。ポスターに「嘘塗れの自白、証拠、証言」とあり、予告編で「目撃者全員が嘘をついている」と語られるように、"嘘をついているのは誰か"ではなく"誰もが嘘をついているが真相は何か"を描く、謎解きミステリーなのだ。
そしてその"嘘"と"事実"の描き方が、映像ならではの手法なところがユニーク。法廷で証人が発言している映像に、その証言とは異なる実際に起きたことを描く映像が挿入されて、観客には事実がどうだったかが分かるような仕掛けになっている。
キアヌ・リーヴスが新境地を開拓、このような人間の表と裏を描くドラマの中心に位置する弁護士という大役に果敢に挑んでいる。