スター・ウォーズ/最後のジェダイ (2017):映画短評
スター・ウォーズ/最後のジェダイ (2017)ライター8人の平均評価: 3.9
SW/クロスロード
IMAX 2Dで鑑賞。作家ルーカスの箱庭から、ディズニーの重大プロジェクトへ――というフェーズの移行を最も強く打ち出し、かなりの新陳代謝を図った内容。とはいえ人気商品を長く持たせるための“会議で作った映画”ではなく、意外なほど「情念」系の仕上がりなのが信頼できる。真に持続性を守るための攻め、といったところか。
当初、ライアン・ジョンソン(監督・脚本)の起用(大抜擢)に関して、SWとの相性は微妙では?と勝手に危惧していたが、前作からのバトンをがっちり受け取って相当な力走を見せたように思う。前半の話の運びは多少もたつくものの、後半~クライマックスの破壊美は壮絶で心揺さぶられた。画のセンスも良い!
希望は次世代へ受け継がれ、新たな伝説が幕を開ける
前作『フォースの覚醒』が原点たる旧三部作への壮大なオマージュであるのに対し、本作はそこからの決別を謳いあげる。言うなれば、世代交代の過渡期に位置する物語だ。
いよいよヴェールを脱ぐ現在のルーク。しかし、英雄の素顔は苦渋に満ちており、輝かしき伝説のメッキも剥がされる。古きものが淘汰されるは時の宿命。ならば、先進は後進に何を教え託すべきなのか。本作の核心はそこにある。
さらに、レイやカイロ・レンなど若い世代の迷いと葛藤を掘り下げながら、銀河戦争における新世代の台頭を明確なものにしていく。脚本的に未消化な部分も多々見られるが、しかし長年のファンならば万感の思いこみあげること必至だ。
ニュー・ジェネレーションへの本格的な移行
「我々は彼らに超えられるためにある」とは、劇中の台詞。この言葉が、すべてを表わしているように思える。
“我々”とはルーク・スカイウォーカーらシリーズでおなじみのキャラクターで、“彼ら”とはレイ、カイロ・レンらEP7以降の登場人物。本作のテーマ自体が若い世代の苦悩や熱情であり、ドラマがこの軸からブレないのがいい。世代や、時代の転換へとつながる“うねり”にも情感があり、シリーズのファンとしては何度か胸が熱くなった。
監督が「EP5のような驚きの展開がある」と語っていたのも納得。カイロ・レンがダークサイドに落ちた理由は、いまだ不明瞭だが、次のEP9の“うねり”として楽しみにしておきたい。
もう一度、フォースの力を信じる気持ちになる
本作は「スター・ウォーズ」をファンのための映画であることから解放して、77年の第1作がそうだったように、誰もが心を熱くする物語として甦えらせようとする。そのために、原点である"希望"の物語に立ち返る。77年作同様、ベタに直球で感動のツボを狙い撃ちする。「スター・ウォーズ」とは何なのかを再確認させてくれる。
それでいてそこに留まらないところに、本作の真髄がある。登場人物2人が別の形で、すでに築かれたものは超えられるためにあることを宣言する。映画はその宣言を実践し、従来のお約束をその通りには踏襲しない。原点回帰でありつつ、新しい。この監督が構想する新たな三部作が楽しみになる。
いろいろ盛りだくさんだが、これはマーク・ハミルの映画!
2時間半の上映時間に、これでもかというほどいろんなことが詰まっている。登場人物も多く、とくにレイとカイロ・レンには深いストーリーが与えられるが、今作の核となるのはルーク・スカイウォーカー。「フォースの覚醒」ではちらりと出ただけだったマーク・ハミルが、再びこの役で「スター・ウォーズ」の話を引っ張っていくのを見るのは、感慨深かった。すごく新鮮かと言われたら、そうではないかもしれないが、楽しさも、迫力あるバトルシーンも盛り込まれていて、「スター・ウォーズ」ファンが求めるものをきちんとお届けする映画だ。
フォースの概念を押し拡げ世界観を更新した次世代のための神話!
欺き続ける展開、目まぐるしく多彩なバトル、ユーモアも忘れないキャラの魅力的な描き込み。そのアプローチはSWの法則に囚われることなく自由闊達で、観る者の心を引っ掴んで振り回す。本作の核心は、ルーカスの呪縛から逃れ、世界観そのもののを更新したことだ。光と闇、ジェダイとシス…古き価値観を過去に追いやり、フォースの解釈を豊かに膨らませ、銀河に新たな秩序をもたらそうとする野心に満ちている。エピソード10~12へのブリッジも匂わせるライアン・ジョンソンのビジョンは、まさに次世代のためのSW神話。旧三部作世代としては、ルークと共に齢を重ねてきた40年の成功と失敗を振り返り、自身の幕引きに思いを馳せた。
さらに激化する愛弟子騒動!
これまでの監督作も、演出が設定の面白さに追いついてなかったライアン・ジョンソンだけに、その不安は的中した感アリ。予想通り『帝国の逆襲』オマージュはあるが、今にもRADWIMPSの曲が流れそうなレイとカイロ・レンの関係に、ただの面倒臭いジジイでしかないルークなど、「さんざん煽って、その程度か!」が続き、展開的にもほとんど進まず。ただ、昨今の角界騒動とムリヤリ結び付けて観ると、ちょっと面白い。“破滅の美学”も『ローグ・ワン』にかなわず、クドさも感じるほどだが、進化しまくるBB-8と旅するフィンと天童よしみ激似の新キャラ・ローズのエピソードはまずまず。とはいえ、ラブシーンの演出はやっぱり微妙だ。
過剰な期待には、十分に応えていると思います
『フォースの覚醒』以上に、どこか最初の3部作のムード&テイストに近づいた感じは、シリーズファンにはうれしい。キャラクターの歯止めが効かない暴走もうまく物語に溶け込んでしまうのが、スター・ウォーズならでは。
描かれる物語は短い時間で大して進まないが、にもかかわらず興奮が途切れないのは、各シーンの切り替えのテンポ、タイミングが的確だからだろう。ライアン・ジョンソン、監督として大健闘。
ライトサイドとダークサイドの混沌がここまでドラマに生きているのもシリーズとして異例かと。ミレニアムファルコンの飛行の爽快感、心に残るセリフなど随所にときめき、揚げ足をとりたくなるシーンは少ないのではないか。