高慢と偏見とゾンビ (2016):映画短評
高慢と偏見とゾンビ (2016)ライター4人の平均評価: 3
ゾンビがコスチュームドラマに活力を与えるよ!
身分差と勘違いですれ違った男女が結ばれるまでの原作は女子の恋のバイブルだが、そこにゾンビが投入されるとどうなる? 不安に思う人もいるだろうが、ゾンビがジェーン・オスティン小説を破壊するどころか、エネルギッシュな活力を与えてくれるのだからたまらない。人間を食いまくるゾンビを剣術やカンフーを駆使してばったばったとなぎ倒す紳士淑女ににやり。ロンダ・ラウジー級は無理だが、リリー・ジェイムズはじめとする女優陣はアクション演技を頑張った! ベネット嬢とダーシーのハードコアなケンカ場面はまさに「愛は戦いである」ことの証明と言っては言い過ぎ? マット・スミスの見事なコミック・リリーフぶりも忘れられない。
古典文学×ゾンビの意外性が全て
19世紀英国文学を代表する名作「高慢と偏見」の基本プロットそのままに、ゾンビ・ホラーを融合させてしまった異色のラブロマンス。全米ベストセラーとなったマッシュアップ小説の待望の映画化だ。
ゾンビ感染の広まるビクトリア朝のイギリスを舞台に、恋の駆け引きからバトル・アクション、血みどろスプラッターまで何でもありの展開はとても賑やか。美脚を露わにしながら、サーベル片手にゾンビをバッサバサと切り捨てていく美人4姉妹もエロカッコいい。
とはいえ、古典文学×ゾンビという組み合わせの生む意外性が全てといった印象で、それ以上の何かを見いだすことはできない。ゾンビブームの生んだ徒花的な作品といったところか。
食い合わせの悪さしか残らない
キーラ・ナイトレイ主演の映画も記憶に新しい、5人姉妹の婚活を描いた小説に、流行りのゾンビが乱入! その奇抜な設定に、原作はマニアにも支持されたが、いざ映画化となると、脚色のバランスが難しいところ。映画的な見せ場を考えてか、ゾンビ要素を強めたが、カンフーやニンジャといった原作の持つイロモノ要素は、ほぼ封印。そのため、ラブストーリーとしても、ゾンビ・ホラーとしても中途半端で、食い合わせの悪さだけが残る結果に。ヒロインの活躍も出オチ止まりなありがちなガールズ・アクションは、原作ファンに響かないのは納得。『セブンティーン・アゲイン』の監督だけに、ラブ要素を強めた方が勝算があったように思える。
ジェイン・オースティン、恐るべし
ジェイン・オースティンが描く18世紀英国の中流家庭の生活に、もしゾンビが出現したらーーという設定だけで楽しい本作。原作小説は、オースティンの小説そのままの世界にゾンビが出現する、という異物感が爆笑モノだったが、映画は逆のパターン。映画は視覚表現なので、ゾンビがいる世界観が提示された途端に、画面全体が一気にゴシック・ホラーな色調と造形になり、そこに、オースティンそのままの若い女性たちの会話や古風な恋愛が投入される。しかし、これが意外と違和感なくしっくりくるところが、原作の力か。ジェイン・オースティン、恐るべし。レナ・ヘディ演じるアイパッチの伯爵夫人が超カッコよく、原作に負けてない。