BLEACH (2018):映画短評
BLEACH (2018)ライター6人の平均評価: 2.3
アクションには見応えあり!シリーズ化にも期待したいが…
長大な人気漫画原作のプロローグ編のみを映画化しているため、誰もがわかりやすいし、原作への敬意を払った丁寧な作りともいえる。
アクション監督の下村勇二によるバトルシーンは見応えがあるし、アクション俳優としての才能豊かな福士蒼汰主演でのシリーズ化を目指していることも応援したい。
しかし、『少年ジャンプ』らしいキャラクター性豊かなバトル漫画かつ長大な原作の魅力を実写化で活かすには、「銀魂」のような割り切った構成か、連作できるドラマシリーズでしか描きにくい気がする。
人気漫画であればあるほど原作のアレンジがファンから反感を買いやすい現在、1本の実写映画化には不向きな題材だった気がして残念。
アクション主体の構成も福士蒼汰は力を持て余しているように映る
世界観や設定が饒舌なセリフによって規定されていく。そしてアクションに次ぐアクション。バトル主体でスピーディな展開に懸けているが、全編を通してフラットだ。幽霊が見えてしまう不条理、母を亡くした喪失感、修行で腕を上げるプロセス…ドラマ部分の劇性に欠ける。フィジカルなリアリティを追求した『るろ剣』とは異なり、悪霊の造形はもちろんバトルの在りようにもVFXへの依存度が高く、ほぼスタントなしで挑む福士蒼汰は、力を持て余しているように映る。あらかじめ続編を企図した作りは『ハガレン』同様に、カタルシスに欠ける。人気漫画シリーズの実写映画化第1弾は今後、1本での完結感で勝負すべきという反面教師になるだろう。
福士蒼汰らキャスト陣は好演なのだが…
霊感を持つ男子高校生がホロウと呼ばれる悪霊を退治する死神となり、愛する家族や友人を守るため最強のホロウと戦うことになる。原作コミックのことはよく知らないが、出来上がった映画に関して言うならば、設定のわりにスケールが小さくて盛り上がりに欠けるという印象は否めないだろう。
福士蒼汰や早乙女太一らキャスト陣の剣劇アクションはかなり頑張っていると思うし、相変わらず達者な杉咲花の芝居にも感心するが、しかし脚本・演出・VFXにおいて、予算や時間の限界がだいぶマイナスに働いているであろうことは想像に難くない。
『るろ剣』『銀魂』に及ばない再現度の低さ
下村勇二によるアクションシークエンスや悪霊・虚(ホロウ)の造形は評価できるが、愛が感じられない羽原大介の脚色など、原作ファンの怒りを買いそうな再現度の低さが際立つ。さらに、手抜きにしか思えないyU + coのタイトルデザインに、日中のクライマックスバトルで露呈されてしまったハンパないコスプレ感。総じて、近年の安定感は目を見張るものだった佐藤信介監督作にして、『万能鑑定士Q』以来といえる残念な結果になってしまった。これでは殺陣を頑張ったキャストが気の毒になるほどで、さすがにこの仕上がりでは、『るろ剣』『銀魂』に続くシリーズ化は難しいだろう。
虚<ホロウ>の造形と動きから目が離せない
原作コミックもアニメも未見の状態で先入観なく映画を見て、悪霊・虚<ホロウ>の造形と動きに魅力された。特に質感。何か日常に存在する物質とは別の、滑らかだが脆くはない質感を感じさせ、実際はどんな質感なのか確かめてみたくなる。
こうした日常的な生物とは異なる異形のモノを、ごく普通の日常的風景の中に出現させて、しかも魅力的に見せることは簡単ではないだろう。舞台が異世界や別の時代なら、異物に説得力を持たせやすいが、背景がどこにでもある駅前商店街的な風景だと、どうしても異物が作り物に見えてしまいやすい。しかし虚<ホロウ>たちは、圧倒的な造形と動きで見る者の感覚を捻じ伏せてくれる。
原作未読で観たら、ツカミはOKだった
あえて原作を読まず、まっさらな気持ちで向き合ったところ、黒崎一護の過去から現在の状況がすんなりわかる展開と等身大の日常ドラマに、悪霊・虚<ホロウ>の襲撃が一気の勢いで、すんなり入り込めた。CGのホロウも迫力満点だし、何より、ここ数作、無理矢理な役も多かった福士蒼汰が一護役はのびのびと演じている感あり。
ただ、中盤からは、スケールが広がりそうで広がらないもどかしさが漂い、見せ場の演出も冗長なのが惜しい。そのせいか何人かのキャストが、単にコスプレしてる人に見えてくる。実写で完璧な再現は不可能なのだから、忠実な外見にこだわるより、映画的に自由になればいいのに…と思うのは原作ファンに失礼なのか。