スーパーメンチ　－時代をプロデュースした男！－ (2013)：映画短評

ジミヘンの勧めで、アリス・クーパーのマネージャーになり、イメージ戦略が大成功。英国進出ではビートルズ関係者と知り合い、映画製作に手を出してリドリー・スコットを発掘。元カノ、シャロン・ストーンの紹介でダライ・ラマの朝食を作ったと思えば、新婚旅行先でスティーブ・ジョブズがPC修理。エンドロールに“全部ウソ！”と出てもおかしくない偶然エピソードの連続に爆笑だが、本編で明かされるウソはひとつだけ（笑）。とはいえ、タモさん以上のおもてなしを感じるホームパーティのこだわりを聞けば、この“最高で最強の人たらし”を愛さずにはいられなくなる。そして、人間関係に悩む人に、何かしらアドバイスをくれるはずだ。

　“自分より他人を優先させる”姿勢で成功を手にしたとは、下半身の武勇伝を除けばリアルのフォレス・ガンプか!?　道徳でも野心でも割り切れない、ユニークな男の半生の記録。

　音楽から映画、料理へと業界を跨いでビジネスを広げたゴードンの歩みを追いつつ、多彩なコメントを配置。誰からも愛されるスーパーメンチ（＝超いいヤツ）ぶりが浮かび上がり、見ていて“友だちになって欲しい！”と思ってしまう。

　友にも富にも恵まれた華々しい成功の一方で、生涯の家族を築けなかったことへの後悔もにじみ、これもガンプとクロスオーバー。86分の中にユーモラスにして痛快、なおかつ切なさを凝縮した快作！

ショービズ界の大物仕事人を紹介する系譜だが、本作のシェップ・ゴードン（46年生）はめっちゃ破格！　メナヘム・ゴーランの豪快さとアーサー・フォーゲルの謙虚さを併せ持つ――いや、それ以上の男前？

“3J”との遭遇から始まるアリス・クーパーのマネージャー稼業はロック史の重要な一断面だ。フィルモアでの珍騒動、ザッパとの格闘、『あの頃ペニー・レインと』の一場面。だが喧騒を離れてマウイ島に移住して以降がまた面白い。

あのマイケル・ダグラスに絶倫ぶりを称揚されるってどんだけタフやねん！と思うが、女性関係も派手というより鷹揚さが基調だ。これは社会的に成功する能力を天才的に備えた賢人の「幸福」論とも言える。

　きっとハリウッド周辺には、こういう何をやってる人なのかよく分からないが誰もが知ってる人物が、大勢いるのにちがいない。そんなハリウッドの奥深さがスリリング。本作が映し出すのは、本年70歳の実在の人物、シェップ・ゴードン。人気ミュージシャン、アリス・クーパー等の仕掛け人で、映画「チューズ・ミー」「パラダイム」「八月の鯨」のプロデューサーで、シャロン・ストーンの元交際相手で、セレブ・シェフの生みの親。そんな人物が語るのだから、各分野の裏話はそれだけで楽しい。さらに興味深いのはその語り口。"ホントかウソか分からないが、オモシロければそんなことは問題ない"というフィクションの真髄が実践されている。