不能犯 (2017):映画短評
不能犯 (2017)ライター3人の平均評価: 4
性格俳優・松坂桃李の本領発揮!
主人公はマインドコントロールで相手を死に至らしめる謎の男。依頼人が電話ボックスに殺したい相手の名前と理由を残しておくと、代わりにその願いを叶えてくれるわけだが、しかし殺意が不純だと依頼人にしっぺ返しが来る…というわけだ。
ストーリーのカギは「思い込み」。それは殺しの手口であると同時に、依頼人たちの殺意の動機でもあり、人間の愚かで勝手な先入観が、次々と凄惨な負の連鎖を招いていく。ブラックな風刺劇としての切れ味はなかなか鋭い。
しかし、最大の見どころは松坂桃李の怪演に尽きる。もともと性格俳優として優れた才能の持ち主だが、本作ではまさに本領発揮といったところ。今後の役選びも楽しみになる。
やっぱり白石晃士は裏切らない。
『貞子vs伽椰子』で、もはや“何撮っても間違いない”ことを実証した白石晃士監督だが、助演としても腕を上げている松坂桃李を主演に迎えた本作でも決して裏切らない。分かりやすく言えば「デスノート」×「笑ゥせぇるすまん」で、オタ的には「地獄少女」で「コードギアス」な原作をベースに、自身の『オカルト』をヴァージョンアップした世界観で、しっかり勝負。そのため、「まさか!?」な設定も、アリにしてしまうあたりも流石だ。ダークヒーローを演じる松坂も私生活でも闇を抱えてるからか、ノリノリで、とにかく観ていて心地良い。去年の『22年目の告白』枠ともいえるサスペンス・スリラーに仕上がっており、早く続編が観たくなる!
メジャーな舞台でも奇才は元気だ!
白石晃士がジャンプ系の漫画原作物を手掛けた! これが藤子A先生の『笑うせえるすまん』『魔太郎がくる!!』等を連想させる異色作のチョイスで、納得の出来。『貞子 vs 伽椰子』が『カルト』の応用だとしたら、今回は『オカルト』の発展。かつての宇野祥平の狂気が“あの”人物(俳優)にバトンリレーされる!
プラシーボ効果の「思い込み」という主題を殺しのテクだけでなく、憎しみの生起、負の連鎖にまで繋げる展開は充分「社会派」でもあるが、当然それ以上に豪腕の娯楽映画。白石がフェイクドキュメンタリーで培ってきたのは「ぶっ飛んだフィクション」の映画術であることが“一般商業映画”の形を取るとストレートに顕わになる。