20センチュリー・ウーマン (2016):映画短評
20センチュリー・ウーマン (2016)ライター3人の平均評価: 4.3
正しいフェミニスト男性の育て方がここに!
マイク・ミルズ監督が母親へのオマージュを捧げた映画で、彼自身の少年時代の思い出も詰まった作品。ノスタルジックなわけではなく、15歳くらいの少年の初恋や心の奥に抱く思い、母親との関係を客観的に見つめている。だからといってドライなわけでもなく、物語の端々から彼を取り巻いていた女性たちへの愛とリスペクトが伝わってくる。中年シングルマザーを演じるアネット・ベニングの保守な根っこが理想を邪魔するジレンマと、グレタ・ガーウィック演じる写真家アビーのNY仕込みのラディカルさの差が印象的。まさに意識の世代間格差! ミルズ監督のようなフェミニストになるにはやはり、アビーのような先鋭的な意識の女性が必要と納得。
ナイーブ少年のリアリティにハマる
半自伝的な作品を撮り続けるマイク・ミルズの映画の中で、本作がもっとも自分の中にしみこんできた理由は、おそらくは十代のリアリティがしっかりとからめとられていたから。
不器用な恋と性、理由不明のいらだち、興味のある事柄への熱意など、十代の習性を見つめる、冷静だがユーモラスで温かい視点がいい。ハードコア・パンクにオカマ呼ばわりされるNYパンクのナイーブさも痛いほどよくわかる。
そんな少年の人生に影響をあたえる女性たちのキャラも魅力を放つ。アネット・ベニングふんする母親も、エル・ファニングの女友達もイイが、パンクロックを教えてくれる間借女性の存在が個人的にはツボ。こんな姉貴が欲しかった!?
「映画作家」マイク・ミルズの実力がとんでもない高みに!
これは凄いよ! 自身の15歳時のひと夏をモデルにした半自伝的作品――という点ではまさに「マイク・ミルズの思春期」。だが同時に、彼に多大な影響を与えた母親を含む三人の女性像が丁寧に描出されており、世代ごとのカラーを実感で伝える生々しいレポートになっている。強力なトリプル女優陣の参戦もあり、フェミニズム運動を背景にした“女性映画”としても出色。
レインコーツやトーキング・ヘッズ等、1979年に流れるパンク/ニューウェイヴの楽曲も単なる時代的記号ではなく、主題に絡む「意味」が託されている。私的な体験を分析的な視座で捉え直し、フィクションとして再構築する事で普遍性へと橋渡しされる堂々の傑作になった!