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哭声/コクソン (2016):映画短評

哭声/コクソン (2016)

2017年3月11日公開 156分

哭声/コクソン
(C) 2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

なかざわひでゆき

近年稀に見る怪作であることは間違いなし

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 韓国の小さな村で次々と起きる猟奇殺人。様々な噂や憶測が広まる中、やがて村外れに住み着いた謎の日本人に疑いの目が向けられていく。
 『殺人の追憶』みたいな猟奇サスペンスかと思ったらビックリ仰天。悪魔憑きだゾンビだ祈祷合戦だと、予期せぬ方向へどんどんと話が膨らむ。和製オカルト映画の怪作『犬神の悪霊』も顔負けの破天荒ぶり。そういえば、設定的になんとなく似ている点も少なくない。そこは日本と韓国の文化的類似性ゆえなのだろう。
 地域社会引いては韓国社会の閉鎖性、キリスト教とシャーマニズムの宗教的融合などを背景にしつつ、あらゆる解釈を許容する手ごわい作品。よく分からんけど凄いもの見ちゃったという感じだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

信じるものは救われるって、ないよね〜。

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

田舎の川で釣り糸を垂れる國村隼の絵柄から不気味全開で、全然のどかじゃない事件が次々と起こり、いきなり連続殺人鬼サスペンスの気配が濃厚に! でもさらに捻るのがナ・ホンジン監督の真骨頂。未知のものへの恐怖がヒステリー的に拡散する様子や、第三者的な視線がないために起こる狭いコミュニティの勘違い結束などなど。人間が心の奥に秘める恐ろしさをすくい取っての連続ノックにゼイゼイ。日本の神道と韓国の(日本のも通じる)祈祷、さらにはキリスト教も絡めてのエクソシストというクライマックスまで見届けるには強靭な体力が必要と感じました。邪な存在は軽々と宗教を超えるというか、神を信じても救われないってことね。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

独自の知見に基づく読解を求め、監督は惑わし攪乱し挑んでいる

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 監督がテーマや読解法を語らず、謎めいたまま世に放たれた韓国映画の怪作。連続殺人の謎解きミステリーかと思いきや、オカルト映画やゾンビ映画に変質する。犯人の疑いを掛けられた素性の知れぬ“よそ者”への、人々の先入観や思い込みに応じて変化しているように映る。不安におののく集団の想念が、悪の姿形を変容させているのではないか。メディアの報じ方によって話題の人物の印象がくるくると変わるように。オープニングで「新約聖書」が引用される。肉と骨をともなってイエスが復活した教えを、本作は、悪意の実体化に置き換えたと僕は読解した。観る者独自の知見に基づく読解を求め、ナ・ホンジン監督は、惑わし攪乱し挑んでいる。

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平沢 薫

映画のジャンルがどんどん変わる!

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 物語が何層にもなっていて、見ているうちに映画のジャンルがどんどん変化していく。異文化差別ものなのかと思ったら、猟奇殺人ものになったかと思うとさらに、と、四転五転。いったい何の話に収束していくのか、最後の最後まで予断を許さない。そのドラマの作り方、作劇術の面白さ。
 しかもそれだけではない。その面白さとは別に、"信じるとはどういうことか"という普遍的なモチーフを描いてもいるので、物語の奥が深い。
 そして、そんなあれやこれやを凌駕してしまいそうなのが、この世界の中に異物として存在する國村隼の静かな怖さ。そのたたずまいは一見の価値あり。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

ドラマかオカルトかはともかく、とにかく強烈!

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 観終わって、なんかスゴイものを見たという印象。二度見て、これはやはりスゴイ……そう思わせるのは物語も映像もディープに突き詰める、ナ・ホンジンの剛腕がなせる技か。

 田舎ののどかさをベースにして、血まみれ殺人事件、悪魔憑き的発狂などの恐怖描写を乱打。國村隼の魔物的存在感に加え、ゾンビ映画を思わせる描写も飛び出す。とりわけ祈祷シーンはアクション映画のようなダイナミズムを感じさせ、目を見張った。

 何より、現実的なドラマとオカルトの境界線を綱渡りする、そんな構造に後ろ髪を引かれる。絵的な興奮を喚起させるばかりか、思索を促す力作。“信心”という物語のテーマを考えつつ、三度目も見なきゃ、だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

ダダ漏れするパワフルな狂気

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

あの『チェイサー』も『哀しき獣』も、本作の前フリでしかなかったと思わせるほどのド怪作。ありがちな、ほのぼの田舎警察もので始まったかと思えば、“よそ者”を演じる國村隼は「指輪物語」のゴラムにしか見えなくなるほどの化け物演技を披露。さらに、颯爽とファン・ジョンミン演じる祈祷師が登場すると、『エクソシスト』<<『震える舌』級のオカルト路線まっしぐら! しかも、ひたすら不穏な空気が流れながらも、スクリーンからパワフルな狂気がダダ漏れ! もはやジャンルを超え、映画の方程式すらもブッ壊した、ナ・ホンジン監督のやりたいこと、全部乗せにひたすらフルボッコ状態。そして、翌日からあの哭声が耳元から離れなくなる…。

この短評にはネタバレを含んでいます
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