夜は短し歩けよ乙女 (2017):映画短評
夜は短し歩けよ乙女 (2017)ライター3人の平均評価: 4.3
摩訶不思議でカラフル、なんとも酔狂な愛すべき青春アニメ
京都を舞台にした、一夜のほろ酔い気分な青春幻想譚。お酒を愛する好奇心旺盛な黒髪の乙女と彼女に恋する絶妙にダメ男な先輩を主人公に、奇妙奇天烈でちょいと粋な夜の住人から物の怪の類までもが入り乱れる摩訶不思議な物語が、ポップアート×大正ロマンといった塩梅のカラフルなアニメーションで綴られていく。
昨年来の青春アニメブームに沸く日本映画界だが、これまた『君の名は。』とも『この世界の片隅に』ともまるで趣の異なるユニークな作品。美しくて微笑ましくて懐かしくて新しくて、狐につままれたような話だけどなんだか楽しくてワクワクする。ロバート秋山の声優としての才能にも要注目だ。
やっぱりこういうアニメもなくちゃ。
色が、形が、動きが、自在に変わる。アニメならではの映像表現がたっぷり楽しめる。スクリーンに溢れるのは、形の抽象化、色彩の自在な変換、突然の画風のチェンジ。あらゆるものの動きは物理法則から解放されていて、動きたいように動く。色彩設計も、明度と彩度の高い北欧絵本のテイスト。映像が、実写映像や実写に近づくことを目指すアニメとはまったく異なる方向へ、どんどん自由に膨らんで、軽やかに広がっていく。その心地よさ。
監督は「MIND GAME」「ピンポン THE ANIMATION」でも映像の自由さを味あわせてくれた湯浅政明。原作の表紙イラストの雰囲気を踏まえつつ、独自の世界を展開している。
あのブッ飛んだ原作を大胆な脚色・演出で完全映画化!
あの「四畳半神話大系」のスタッフ再結集というだけで、今さらな主題歌アジカンも許せてしまうが、とにかく『マインド・ゲーム』以来、13年ぶりとなる奇才・湯浅政明監督の長編映画作品である。原作では第1章だけだった夜の設定を、季節も時間も(星座も)越え、ゲリラ演劇がミュージカルと化す第3章まで、一夜の話にしてしまうブッ飛んだ脚色に驚愕。星野源が絶叫しながら、膨大なセリフ量をまくしたてる先輩の演出に唖然。そして、今年のワンダーウーマンとベストヒロインの座を争ってもおかしくない、黒髪の乙女のキャラ力にクギ付け。17年も“アニメの年”と思わせるほど、93分間ノンストップで突き進む、驚異の映像体験を約束する!