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嘘八百 (2017):映画短評

嘘八百 (2017)

2018年1月5日公開 105分

嘘八百
(C) 2018「嘘八百」製作委員会

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

清水 節

得難いオリジナル脚本が役者の個性を際立たせた丁々発止

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 インチキ古物商中井貴一とダメな陶芸家佐々木蔵之介が手を組んで狙う一攫千金は、寅さんのいない日本の正月に安定の初笑い。ホンモノよりも本物らしいニセモノでまんまと人を欺く。洋の東西を問わず、詐欺師をめぐる映画に名作が多いのは、虚構で人を幸せにする「映画」の本質的魅力が凝縮されているからだ。騙し騙される姿に、映画と我々の姿が重なる。入念に練られた今どき得難いオリジナル脚本の力が、曲者役者たちの個性を際立たせ、軽やかな丁々発止を引き出している。昨今の邦画に欠落していた系譜の軽妙な笑いとペーソス。『百円の恋』でブレイクした武正晴には、次なるステージへ歩を進めて戴き、更なる大嘘を期待したい。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

ほどよい脱力感がある騙し合いに引き込まれる

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

タッグを組んだ一攫千金狙いの古物商と贋作者に成り果てた陶芸家が大御所鑑定士を騙し、なおかつ一攫千金を狙うコン・ゲームがテンポよく進行する。騙し騙される人々の関係性やリベンジしたい男たちのモチベーションのあり方、彼らの来し方など細部までしっかりと練られた今井雅子の脚本が素晴らしい。W主演を務めた中井貴一と佐々木蔵之介は安定の好演で、特に陶芸家としての情熱を取り戻すシーンの佐々木が色っぽくて良い。二人が生み出す安心感に加え、各種の特技を持つ詐欺仲間を演じる木下ほうかや坂田利夫、いかにもな悪役の近藤正臣らがまたクスリと笑わせてくれる。褒め過ぎかもしれないが、『スティング』っぽい感じの秀作だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

『ローガン・ラッキー』にも匹敵する面白さ!

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 しがない骨董商と売れない陶芸家が、自分たちの人生を狂わせた骨董界の重鎮に一泡吹かせるべく、一攫千金を狙った一世一代の骨董詐欺を計画する。まさしく目には目をってやつだ。
 ストーリー運びのテンポの良さ、クセモノだらけのキャラの憎めなさ、詐欺計画のディテール描写の巧妙さ、そして粋なユーモアを散りばめたセリフの鋭さ。全編これでもかというくらいに軽妙洒脱。正直者が馬鹿を見る世の中への痛烈な風刺や、ホロっとするような負け犬のペーソスも効いている。
 中年男の悲哀を滲ませた中井貴一と佐々木蔵之介も相性抜群。詐欺と強盗の違いこそあれども、この爽快な面白さは『ローガン・ラッキー』にも匹敵すると言えよう。

この短評にはネタバレを含んでいます
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