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グッド・タイム (2017):映画短評

グッド・タイム (2017)

2017年11月3日公開 100分

グッド・タイム
(C) 2017 Hercules Film Investments, SARL

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.6

山縣みどり

共感する、なんて軽々しく口にできない世界がある

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

『神様なんてくそくらえ』に続き、またもや社会の底辺であえぐ若者に焦点を当てたサフディ兄弟監督。R・パティンソン演じる主人公コニーのやることなすことすべてが失敗という不運ぶりがそこはかとなく笑えるとはいえ、全体のトーンはかなり悲惨。生い立ちや人種、そして無学ゆえに成功とは縁遠い人々がいて、さらには「一攫千金=成功」というビジョンしか描けない状況に戸惑いを感じる。独善的な考えで突っ走っては弟を振り回すコニーに共感することはできないのだが、彼が抱えているフラストレーションが画面から伝わってきて胸がヒリリと痛い。前々から目つきに不穏なものを感じていたパティンソンの熱演は必見!

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

大都会ニューヨークの裏側にアメリカ社会の現実を見る

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 銀行強盗を企てた兄弟。知的障害を抱えた弟だけが逃げ遅れて警察に捕まる。指名手配犯として追われつつも、弟を留置所から救出しようと奔走する兄。しかし、やることなすこと全てが裏目に出て行く。その一晩の出来事をドキュメンタリー・タッチで描く。
 まさに貧すれば鈍する。ニューヨークの最底辺で生きる主人公たちの行動は、あまりにも愚かで滑稽で短絡的だが、しかし同時に夢も希望も持てない貧しい若者の惨めな悲哀が滲む。殺伐とした大都会の裏側。
 その凍てついた日常風景をも、カメラはザラついた映像で克明に捉えていく。ゲリラ撮影だからこそのリアルな生々しさ。これもまた、現代アメリカ社会の一つの現実だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

100分間、悪夢のようなトリップ体験

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

どこか『死にたいほどの夜』を思い出す、“明らかに、うまくいかない一夜”。同じNYクイーンズ地区が舞台だけに、“悪逆無道な『スパイダーマン:ホームカミング』”ともいえるだろう。とにかく近年ジワジワ来ていた、ロバート・パティンソンが大化け! 弟を救うためにテンパりながらも、偶然出会った少女をタラシ込むなど、あくまでも衝動的なゲス野郎がハマっている。そして、もうひとりの主人公である、常に観る者の不安を掻き立ててくれるワンオートリックス・ポイント・ネヴァーのサウンド。決して万人受けするエンタメ作品ではないが、エンディングに流れるイギー・ポップの歌声など、まるで美しい悪夢のようなトリップ体験を約束する。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

息苦しさが快感に変わっていく映画の奇跡

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

この兄弟監督は前作『神様なんてくそくらえ』でも被写体に執拗にカメラが迫り、いい意味での息苦しさを達成したが、今回はさらに過剰なまでにアップを多用。そのスタイルが、信じられないレベルで物語にマッチしているではないか! 息苦しさが映画のパワーへ変換される。そんな奇跡に出会った気分。そして終盤、主人公を追うカメラが急に引きになる瞬間、「神の視点」さえ感じさせ、崇高な感覚に浸った。
ここ数作、自分の演技力を磨こうとばかりの、ロバート・パティンソンの役選びとチャレンジ精神には頭が下がる。スターの地位より、演じることに命を懸けるように…。こいつが出てれば観たくなる、という状況が作られつつある。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

音楽とロバート・パティンソンが夜を駆け抜ける

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ニューヨークの底辺で生きる兄と弟が、成功するはずもない銀行強盗をして失敗し、そこから始まる一夜を描く本作は、この設定から想像する通りの作品なのだが、"音楽"が、登場人物の一人となって動き回り、観客を魅了する。音楽は、エレクトロの老舗レーベルWarpからアルバムを出すワンオートリックス・ポイント・ネヴァーことダニエル・ロパティン。ソ連亡命者の両親を持つブルックリン在住の彼は、ソフィア・コッポラの「ブリングリング」の音楽監修コンビの一人。「攻殻機動隊」のサントラを何度も聞いて川井憲次の影響を受けたという人物でもある。夜の中を疾走/迷走する、この音楽とロバート・パティンソンの共演ぶりがいい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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