ボブという名の猫 幸せのハイタッチ (2016):映画短評
ボブという名の猫 幸せのハイタッチ (2016)ライター5人の平均評価: 3.4
名演だけじゃない、ボブのセラピストぶりにも注目
『ねこタクシー』などの動物シリーズ好きとしては、
ようやく時代が追いついてきたのかとほくそ笑んでいる。
動物モノは擬人化するか、
巧みに編集して動物の意思で物語が展開しているように見せるかのいずれかが主流。
だが動物シリーズも本作も、
虚構か実話かの差はあれど、基本的に猫はなにもしない。そばにいるだけ。
でも猫によって人が変わるのだ。
しかも薬物依存症にアニマルセラピーが有効かも?という実証例であり、
医学的にも注目すべき映画なのではないだろうか。
ただ、時折ボブ目線映像を挿入したことで”猫可愛がり”が過ぎた感がある。
クールだけど情に厚い。
そんなボブの魅力がより際立ったと思うのだ。
ロジャー・スポティスウッド監督の職人技、光る!
イメージ通り、にゃんこ相方の『ONCE ダブリンの街角で』。とはいえ、ホームレスのドラッグ依存症患者である主人公を襲うヘヴィでリアルな描写は、「アンビリバボー」でも紹介された“リアル招き猫”な美しいサクセスストーリーを期待した観客を容赦なく突き落としてくれる。つまり、「客寄せにゃんこ映画」に終わらせず、ロンドンの裏の顔も、「ビッグイシュー」の仕組みも学べる社会派として見応えもアリ。そのメリハリは、さすがはペキンパーの編集マンから『007』監督までのしあがった職人、ロジャー・スポティスウッド監督ならでは。『ターナー&フーチ/すてきな相棒』を思い起こさせる、ほのぼのシーンもあり、拾いモノ感強し。
フィール・グッドな気持ちになる猫の恩返し。
タイトルは『欲望という名の電車』のもじりだけど、ポジティブなフィール・グッド映画! 薬物依存症の青年ジェームズが怪我した野良猫を助けたことで人生をやり直す活力を得る過程に説得力あり。猫ボブを媒介に他人と関わるようになるとジェームズの心の扉が開き始め、大事な存在がいることで責任感や保護本能も芽生えていく。救ったはずのボブに実はジェームズが救われていたわけで、猫パワー万歳! ビッグイシュー販売のショバ争いや父親との関係は、物語を盛り上げるために挿入された? 不要じゃないが、もう少し突っ込んでほしかった。可愛いというより頼もしいボブ役で本物のボブも出演していて、なかなかの役者っぷりを見せてくれる。
猫への愛に満ちた、猫好きは必見の映画
実話ではあるけれども、話自体は、人がどん底から立ち直っていくという、よくあるもの。それを特別なものにしているのは、猫の存在が大きく関わっていること。そして、その猫が本当にしょっちゅうシーンに登場しては、「やるよねー、こういうこと!」と微笑ませることをやってくれるのだから、たまらない。さらに、 猫を肩に乗せて街に出るという、猫好きにとっての最高の夢を見せてもくれるのだ。しかもその街はロンドン!今作に関わった人たちはみんな猫好きだったはずで、その愛がたっぷり感じられる。 猫にまるきり興味がない人は、星1個減らして判断してもらったほうがいいかも。
猫が神妙な顔をする
猫のたたずまいを映し出して、猫の感情を読み取らせる。猫に詳しくないので、本作の猫の表現がリアルかどうか判別できないが、主人公が悩んでいると、猫が神妙な顔をする。主人公がリラックスしていると、猫が眠そうな顔をする。そのときどきの猫の表情が、ドラマのアクセントになっている。この猫は、映画の原作実話の猫本人。丸顔で手足が太い、あまり美猫ではないタイプなのかもしれないが、どんどん魅力的に見えてくる。
主人公はロンドンのホームレスでストリートミュージシャンで、英国のビンボーな青春映画好きにもぴったりの設定。主演のルーク・トレッダウェイは「アタック・ザ・ブロック」同様、貧乏な青年役が似合ってる。